【無料記事】【トピックス】『久方ぶりのプリメーラ』 城福監督「いまの条件下でやれる改善策のひとつ」(24.9.4)
■クラブの実情に即した唯一の手段
ここでのトレーニング風景を見るのはいつ以来のことだろう。2日間のオフ明け、東京ヴェルディは2009年までトップチーム専用として使用していた、クラブハウスに隣接する第一天然芝グラウンド(プリメーラ)で練習を行った。
通常は第二天然芝グラウンド(レセルバ)を使っており、トレーニングの環境において深刻な問題が生じているのは以前書いたとおりだ(こちらとこちらをご参照あれ)。
城福浩監督は言う。
「緊急の課題だとクラブには伝えてきて、芝の傷みが激しい中央部分だけはどうにかしてほしい、グラウンドの貸主ともっと膝を突き合わせて話してくれないかと要望を出していました。この場合、何を優先するかが大事で、われわれは選手がなるべくストレスを感じずにトレーニングできるように、芝の生え揃いを重要視しています。ピッチの硬さに関しては、土を掘り返して芝を全面的に張り替えない限り、根本的な解消は難しい。それはいまの自分たちにとって現実的な話ではありません。
今回、関係各所の努力の結果、最も使用頻度の高いゴールポストの幅、縦100メートルの部分は芝の植え替えを含めて整備に着手してもらえることになりました。広範囲になると今度は根づかせるのに時間がかかる問題が出てくるのでね。これがいまの条件下でやれる改善策のひとつ。だったら、われわれはグラウンドに一歩も立ち入ることなく協力すると」
よってチームは、9月14日のJ1第30節、北海道コンサドーレ札幌戦の2日前のトレーニングまで、多摩市立陸上競技場やAGFフィールド(味の素スタジアム西競技場)を転々とすることになる。
「メディカルやエキップのスタッフには小さくない負荷がかかります。トレーニングに必要な荷物を全部運ばなければいけませんから。今日はほかの場所が空いてなくてここ(プリメーラ)を使わせてもらいましたが、継続的に練習ができたらいろいろなことが解決する、一歩どころではなく百歩くらい前進するのにな、という思いは正直ありますね。(駐車場として利用され)タイヤの圧さえ受けなければ、縦にも横にもずらすことができて、言うことなしのすばらしいグラウンド。周りを囲われているのも、プロの練習場という雰囲気です。
今日、このグラウンドに足を踏み入れたとき思い出しましたよ。かれこれ40年ぐらい前でしょうか。僕のいた富士通が読売クラブと練習試合をしたことがあったんです。こっちの選手がラモス(瑠偉)さんの股抜きをしたら怒っちゃって、もう大喧嘩。非常に殺伐としたゲームになったのを憶えています」
そう言って、城福監督は笑った。血相を変える緑のレジェンド、往年のラモス瑠偉が目に浮かぶようだ。
現在は時間貸しの形で日テレ・東京ヴェルディベレーザが使用しているプリメーラの用途を再びサッカーに特化し、年間を通してふたつの天然芝グラウンドを大事に使い回していければ、練習環境の問題は大幅に改善される。
クラブの実情に即した唯一の手段であり、ポイントとなるのは貸主であるよみうりランドの理解と費用の面で折り合えるかどうかだ。グラウンド事情の厳しい都内において貴重な大型スポーツ施設である。むろん、そこには営利企業として優先すべき判断があろうが、スポーツを通じた社会貢献、サステナビリティの観点を加え、今後の交渉で協力関係を築ければ、J1定着を目指す東京Vにとって最大の後押しになる。