「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【トピックス】特集『ルーツ探訪 日々の勲章を積み重ねる ~明治大学体育会サッカー部~ 』前編(22.12.18)

特集『ルーツ探訪 日々の勲章を積み重ねる ~明治大学体育会サッカー部~』前編

 

2005年、関東大学サッカーリーグが1部12チーム、2部12チームの24大学制になって以降、1部に居続けている唯一のチーム。それが明治大学体育会サッカー部だ。
大学サッカー界きっての強豪で、毎年、多数のプロ選手がここから巣立っている。近年、東京ヴェルディには明治大出身の選手が次々に加入し、急速に結びつきを強めているところだ。彼らの残した足跡をたどり、東京都世田谷区の八幡山グラウンドへ。栗田大輔監督に話を訊いた。

 

■ワールドスタンダードを意識

京王線の八幡山駅で下りるのは、おそらく20数年ぶり、30年近く前のことか。

近くに雑誌の専門図書館である大宅壮一文庫があり、出版社のバイト小僧時代に調べものの使い走りによくいかされた。膨大な雑誌コレクションのなかから検索し、目当ての記事のコピーを調達してくるのである。大概のことはググって解決する現代の人には信じられないだろうが、ネット普及以前、必要な情報を得るにはそうするしかなかった。

いま思えば、あのときに道端ですれ違ったジャージー姿の若者は明治大学体育会の学生だったのだ。

同年代のはずなのに身にまとう空気感が自分とはまるで違い、気後れした感覚を憶えている。僕は授業をろくすっぽ出ずに教養課程で2回も留年した落ちこぼれで、まともに就活をしても惨敗は目に見えていた。先の見通しが一切立っていない自分と比べ、スポーツに打ち込む彼らは意気揚々と目標に向かってまっすぐ歩いているように見えた。

徒歩10分と少し、明治大学体育会サッカー部が活動する八幡山グラウンドに着く。ほかにラグビー部、アメリカンフットボール部、競走部、ホッケー部、アーチェリー部なども同居するカレッジスポーツの一大拠点である。

練習は朝8時からスタートした。

フィジカルトレーニングから始まり、パス&コントロールなどを経て、6対6のセッション、そしてゲーム形式へと移っていく。さすがは大学トップクラスのチームとあって、それぞれ身体つきがよく、アスリート能力が高い。

「いま練習しているのはBチーム。Aチームは10時からですよ」とスタッフから聞かされ、おお、これがBチームなのかと驚く。

その後、Aチームの練習はさらにスピード感が増し、プレー強度が高かったのは言うまでもない。

「インテンシティの高さ、競り合いの激しさはかなりのものでしょ? 現在、世界のサッカーがどうなっているのか、ワールドスタンダードに照らし合わせてトレーニングを行っています」と言うのは栗田大輔監督である。

栗田監督は1970年生まれ、静岡県出身。清水東高校から明治大に進み、2013年からコーチを務め、2015年、監督に就任した。東京ヴェルディの江尻篤彦強化部長、堀孝史前監督は、大学の3つ上の先輩にあたる。

「特に江尻さんとは同じ清水の出ですからね。小学生の頃からよく存じ上げています」と笑った。

日本代表史上初、ワールドカップ4大会出場の長友佑都(FC東京)をはじめ、明治大は幾多のプロを輩出してきた。栗田体制となって以降、その数はさらに増し、毎年Jリーグに俊英を送り出している。

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