「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【新東京書簡】第八十八信『指導者、長島裕明その人』海江田(22.5.12)

新東京書簡

第八十八信 指導者、長島裕明その人

■ようやくコロナ以前の取材環境に

試合が終わったら、だいたい10分後には監督会見。部屋で待機し、顔見知りの記者とああだこうだ話しながら、どんな質問をすればゲームの本質に触れられるのかを考える。クリティカルヒットはまれだが、せめてゲームの理解に役立つことは聞き出しておきたい。

そのあとはミックスゾーンに場所を移し、選手のコメント取りだ。今日は誰がマストで、その次は誰。話を聞きたい選手の顔を頭に浮かべ、どうすれば必要に足る質量を確保できるのか、もし出てくるタイミングが重なってしまったらどちらをあきらめるのか、作戦を組み立てる。ロッカールームから出てくる順番の早さ、受け答えはしっかりしているが言葉数の少ない選手、自分から積極的に話を展開できるタイプなどのデータも重要だ。

最近、ようやくコロナ以前の取材環境に少しずつ戻りつつあり、そうそうこんな感じだったなあと感覚が戻ってくるのがうれしい。おそらく、後藤さんも似たような状況だろうと思う。

仕事の場だから、試合に勝っても負けてもこちらは一定の温度、テンションで接するべきで、ヘンに気持ちを寄せられるよりそのほうが選手も話しやすかろうと思うのだが、これがからっきしうまくいかない。対面取材が久しぶりのせいか、話しているうちにテンションが上がったり下がったり、そもそも話の入り方を間違えたりして、何年この仕事やってンだよと自分を毒づきたくなる。

また、聞き取りのメモ、速書きの技術(速記というほど専門的ではない)も著しく衰えている。どうやらしばらくはリハビリの日々だ。

いろいろ不具合があっても自分がどうにかすればいいわけで、失敗したところで挽回の余地は残されている。うちの読者はおれがたまにへまをやらかすのは先刻承知だから眉ひとつ動かさない。要するに、新型コロナウイルスの問題よりもコントロールできるだけ与しやすく、はるかにマシである。

4月23日のJ2第11節、ジェフユナイテッド千葉戦(1‐1△)の直前、堀孝史監督にコロナの陽性反応が出て、現場でほかに唯一のS級ライセンス保持者である長島裕明コーチが以降の3試合指揮を執ることになった。青赤の一部の人たちもひそかに注目していただろう。

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