「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【インタビュー】『東京ヴェルディの明日はどっちだ』中村考昭代表取締役社長に訊く・後編(21.8.25)

中村考昭

『東京ヴェルディの明日はどっちだ』
中村考昭代表取締役社長に訊く・後編

※インタビュー前編

■事業規模20億がゴールのはずはない

――では、本題の経営面に移らせてください。Jリーグが5月に発表した経営開示資料によると、2020年度の営業収益が14億9300万円で、5億2700万円の赤字。3億9900万円の債務超過となっています。この数字と21年度の見込みについて聞かせてください。
「新体制発表のときにお伝えしたとおり、マイナス分に関してはゼビオグループのサポートを受けておりますので、安心していただいて問題ありません。今年度については、やはり新型コロナウイルスの影響が大きく、特に東京は緊急事態宣言が発出される地域ですから、先行きが不透明で予断を許さない状況。難しい環境に置かれているのは事実です。以前は適切ではない売上や費用の計上方法が見られましたので、経営を正しい形にするのが先決と考えています」

――コロナによるダメージが長引き、昨年度を上回る厳しい状況なのでは?
「それはありますけれども、スポンサー営業の体制をブラッシュアップ、バージョンアップし、しっかりと数字をつくれて、お客さまとの関係も構築できるように変えていってます。東京は日本で一番法人が多いエリア。新しい協賛企業は増えてますよ。スポンサー企業の構成が変わり、ニチガスさんをユニフォームの胸に、鎖骨部分は新規のセガサミーホールディングスさんと契約しました。これまではややターゲットが偏っていて限定的でしたので、幅広くアプローチしていい形で伸びていってます。一気に倍増だとか将来バラ色の話ではないですが、現段階では地道に積み上げていく作業が必要です。あとはチケット収入をどう増やしていくか。1試合平均入場者数の数字は横這い、あるいは微減傾向で、ある意味ここが東京Vの10年間を象徴しているように映ります。こちらも急激に増やすことは現実的ではなく、スタジアムに足を運んでくれた方々に楽しんでもらい、毎年少しずつでも上積みしていきたい。1年ごとのアップ率は小さくとも、きちんと継続し、10年経てば大きな数字になりますので。サポーターの方々にはどうか協力をお願いします」

――入場料収入は伸びしろに違いないです。東京Vが20億弱の予算規模に到達したのは地道に成長したという見方もできますが、首都東京、1200万人のメガタウンです。この数字の妥当性はいかがでしょう?
「事業規模では小さい。20億がゴールのはずはありません。J2で安定して中位に位置し、降格しないという意味合いでは20億を少し下回る予算でも足りるかもしれませんが、われわれはそこが目標のクラブではありませんので。J1で戦っていけるチームをつくる場合、30億でも不充分でしょう。40億くらいである程度やっていける目処が立ち、50~60億を超えてこないとJ1の上位と渡り合い、ACLを戦っていくのは難しい。長期的には三桁を目標にすべきだと思います。ビッグマウスのつもりはなく、本来、東京Vはそうなる可能性を持ったクラブ。過去10年の停滞は事実ですが、ここから先はJ1昇格の先を見据えて、あるべき形に向かっていきます。そのためには、瞬間的な手法で売上をつくったり、近視眼的なチーム編成で結果を出そうとするのではなく、中長期的なスパンでチームが成長し、いい選手が出てくる流れをつくることが大事です」

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