「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【インタビュー】A Secret on the Pitch ピッチは知っている 〈6〉『サッカー選手が勝手に育っていく土壌』土持功(ヴェルディS.S.相模原代表)前編(20.3.26)

山本理仁は、小3までヴェルディS.S.相模原でプレーした。

山本理仁の無邪気なピースサイン。小3までヴェルディS.S.相模原でプレーした。

A Secret on the Pitch ピッチは知っている 〈6〉
『サッカー選手が勝手に育っていく土壌』土持功(ヴェルディS.S.相模原代表)前編

 

東京ヴェルディの公認支部である、ヴェルディS.S.相模原。河野広貴、山本理仁、南秀仁(モンテディオ山形)など、数多くの優秀な選手たちを輩出している街クラブだ。いまをときめく俳優の竹内涼真さんもそう。練習場となっている相模原北公園スポーツ広場でボールを蹴っていた。
彼らはここでどのような時間を過ごし、やがて巣立っていったのか。通称ヴェルサガのピッチには、ほかにはない何があるのか。往年の読売クラブでキレキレのドリブラーとして鳴らし、創設以来、代表を務める土持功さんを訪ねた。折よく、出身選手たちをよく知る野口裕大コーチにも会うことができたため、全3部構成でお届けしたい。

 

■選手になるように生まれてきた

――ヴェルディS.S.相模原出身と言えば、昨年、ユースから飛び級でトップに昇格し、年代別代表にも名を連ねる山本理仁選手がいます。彼の印象は何か残ってますか?
「うちにいたときはまだ小さかったから、一緒にはボールを蹴ってないんですよ。スクールの練習を眺めていたら、やたらとうめえガキがいるなと思い、こっちこいと呼んだことがありましたね。おまえ、名前はなんつうんだ? いくつだ? と訊いたら、『山本です。小3です』とひょろひょろっとした声で答える。しかも、近くで見たらかわいい顔をしていた。こいつ、持ってやがるなと。そっか、だったら4年生になったら本部にいけ、ジュニアのセレクションを受けてみろと言ったのを憶えています」

――山本選手は東京ヴェルディと川崎フロンターレの新小4セレクションを受け、前者に合格、後者は不合格。もし逆だったらと思うと、ぞっとします。本人の弁によると、「ほかの選手と同じように1次セレクションから参加しました。特別な待遇は何もなかったですし、もし自分の出来が悪ければ落とされたでしょう」。相模原でピカイチの選手でも推薦のような形はない?
「それは彼が実力で勝ち取ったもの。上のカテゴリーでは推薦はあります。過去、うちのジュニアユースから本部のユースにいった河野広貴や南秀仁はそうです。ただし、僕がいい選手だからよろしくと本部に伝えたところで、必ずしもセレクションを通過できるわけではないです。そこにはまた別の判断、指導者の見立てがある」

――なるほど。私は土持さんから以前聞いて書かせてもらった河野選手のエピソードが大好きなんです。あれはたしか彼が小5のときですよね。
「もう少し小さかったかも。幼稚園の園庭でやっていた頃です。広貴がドリブルで向かってきて、ふっと気を抜いた瞬間、もろに逆を取られちゃってね。小学生相手にそんなことはまずない。ええい、しゃらくせえと足を引っかけ、身体をガツンと入れたら軽く吹っ飛んで顔面から土に落ちた。どうした、泣いてんのか? とからかうと、むくっと起き上がり、鼻からフンッと土を出してボールを探すんですわ。そのとき、この子はモノになるなと思いました」

(残り 2070文字/全文: 3452文字)

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