「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【トピックス】検証ルポ『2019シーズン 緑の轍』第二章 波間に漂う(19.12.20)

林陵平は、開幕4戦3ゴールを挙げてチームを引っ張った。

林陵平は、開幕4戦3ゴールを挙げてチームを引っ張った。

第二章 波間に漂う

■監督のイメージを実現させるためには

あちこちのクラブを知る記者ほど、「ヴェルディは取材がしやすくていいですね」と言う。監督の囲み取材は一般的なぶら下がりではなく、ソファーに腰かけてゆっくり話を聞け、選手との接点もつくりやすい。

練習から上がってきたタイミングで時間をもらったり(雨降りなど、身体が冷えてしまうときは見送る)、帰りがけに取材に応じてもらうことも可能だ。その際、どこかのクラブのように広報担当が神経質に張りつくことはない。外部に向けて何を話し、何を話すべきではないのかは基本的に選手の判断に委ねられている。

どうしてもコメントが必要な場合は「あとで少し時間をください」と伝えておけば、マッサージや食事の前後にひょいと顔を出してくれる。気のいい選手が多いということもあるだろう。また、今季で現役を退いた田村直也をはじめ、メディア対応も選手の仕事のひとつと捉え、サービス精神をもって接する先輩たちの背中を見て育ったとの見方もできるかもしれない。

3月22日。佐藤優平の話を聞いていたところ、折り悪く約束をしていた林陵平が身支度を整えて現れた。あららという顔をする僕に、大丈夫、待ってるからと林は目で語り、近くのソファーに腰を下ろした。こちらにプレッシャーをかけぬよう、何も言わずにポケットからスマホを取り出してくつろぐ。その配慮をありがたく思った。

佐藤の話を聞き終えた僕は、待たせちゃって悪かったと林の前に座る。

「さっき、優平の話にびっくりしてたでしょ?」

林はこちらの内面を見透かしたように笑った。

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