「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【フットボール・ブレス・ユー】第34回 ギラギラ太陽、メラメラ大輔 ~レノファ山口FC 高木大輔~(18.5.15)

第34回 ギラギラ太陽、メラメラ大輔 ~レノファ山口FC 高木大輔~

今季、期限付き移籍で外に出た選手のなかでダントツの出世頭だ。レノファ山口FCで開幕から先発出場を続け、13試合4得点の高木大輔。ゴールの報せが届く度、よかったなあという思いに、幾ばくかザラついた感情がにじむ。

5月12日、J2第14節の山口 vs 東京ヴェルディ。この日は契約の関係でピッチに立てない高木に、試合前、取材の時間を取ってもらった。

「結果を出さなければいけない。その覚悟を持って山口にきました。初めての移籍で不安はありましたが、チームメイト、コーチングスタッフ、サポーターなど周囲の人たちに恵まれましたね。そのおかげでいまのチームの順位、個人としての結果がある」

東京から遠く離れ、オレンジのシャツに袖をとおした高木に、新しい環境はどのような発見をもたらしたのか。

「環境によって、人は変わるんだなと。練習環境や生活に不便を感じることはないですね。逆に、山口という土地に助けられたという気持ちが強い。県全体でレノファを応援してくれているのが伝わり、勝てば勝つほど盛り上がっているのが実感できます。ヴェルディのときより、さらに強いホーム感を味わえる」

クラブに対する注目度の高さ。そこはローカルならではの強みだ。

「東京には、ヴェルディをはじめサッカークラブがいくつもあり、野球やほかのスポーツもある。ここには、良くも悪くもレノファしかないんです。チームの結果はいつも夕方のニュースで取り上げられ、選手が月間MVPを受賞すればビッグニュースとして伝えられます。応援する空気が濃密な分、こちらもがんばらなければという気持ちになる。オレンジのシャツはどうかなと思ったんですけど、めっちゃ似合うねと言われます」

と、高木はまんざらでもない顔である。

オナイウ阿道、小野瀬康介とともに形成する3トップはリーグ屈指の攻撃力を発揮。山口を上位に押し上げる原動力となっている。

「それぞれ異なる特長を持っているのが、よい効果を生んでいるのでは。アドは身体能力の高さとシュートの巧さ。多少無理な体勢でもゴールを狙える能力がある。康介くんは何よりあの誰にも真似できないドリブルです。ボールを持てば、スタジアムの空気が一瞬で変わります。僕も彼らみたいなプレーができたらなと思う一方、前からのディフェンスや背後を取る動きなど自分にしかないよさもあると思っているので。3人とも誰かが点を取ったらメラメラしていますよ。でも、個人の結果だけに欲深くなってしまうと、いい結果が出なくなるのはみんなわかっている。とはいえ、いまのところ彼らは自分より結果を出していて、ゴール数で負けるのは悔しい」

そこで、はたと僕は気づく。自分が山口で見たかったのは、このメラメラした高木の眼だったのだ。

昨年のように自分を押し殺し、フォア・ザ・チームに徹する高木は見上げたものだと感じていたが、釈然としない思いがあったのもまた事実だった。チームを勝たせ、かつゴールを至上の喜びとするストライカー気質。そうこなくっちゃ面白くない。

「これまでいろいろと言葉をかけていただき、今回僕のことを必要としてくれたシモさん(霜田正浩監督)の期待にも応えたい。信頼してゲームに使ってもらい、その気持ちに報いるには結果を出し、自分の成長した姿を見せるしかないですから」

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