【トピックス】検証ルポ『2016シーズン 緑の轍』第四章 萌芽(2016/12/23)
第四章 萌芽
■ひじ打ちがズンと
「どんなことでもいい。(中村)俊輔に、おまえという選手を刻みつけてこい」
井上潮音は冨樫剛一監督にそう言われ、ピッチに入った。9月22日、天皇杯3回戦、横浜F・マリノス戦。なんの因果か、高知県立春野総合運動公園陸上競技場で行われたゲームだった。
25分、井上は鮮烈なプレーを見せる。味方から短いパスを受けようとしたとき、斜め後ろから中村が迫っていた。間接視野に優れる井上は気づいている。いったんボールを戻し、中村の寄せから逃げるだろうと僕は見た。ところが、井上はボールを引いて、突っ込んでくる中村をひらりとかわし、すぐさまドリブルを開始。ルーキーが、日本代表で一時代を築いた名選手を手玉に取った。
横浜FM戦、井上は中村に対して一歩も引かなかった。プレーでも、気持ちの面でも。敢然と立ち向かい、球際の争いでガツガツ身体をぶつけ続けた。
試合自体は、0-4の完敗。力の差をまざまざと見せつけられた。
その後、僕は鈴木椋大と話す機会があった。中村は、井上のあまりのしつこさ、遠慮の欠片もないディフェンス、可愛げのない態度に腹を立てただろうかと。
「あんなの全然平気でしょ。だって、シュンさんがこれまでどこでプレーしてきたか。欧州チャンピオンズリーグに、当たりの激しいスコットランドリーグですよ。まったく問題ではない。(渡辺)皓太のチャージには、ちょっと怒ってましたけどね」
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