「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【フットボール・ブレス・ユー】第8回 遠くから思っている(2016/06/23)

第8回 遠くから思っている

6月13日、アルビレックス新潟は次のようなプレスリリースを出した。〈早川史哉選手の病状検査結果について〉。病名は急性白血病。これを知ってすぐさまアクションを起こしたのは、U‐16日本代表からのチームメイトで、2011年のFIFA U‐17ワールドカップで早川とともに戦った高木大輔だ。クラブと選手会に掛け合い、19日の第19節の京都サンガF.C.戦から「早川選手支援基金募金」を実施した。さすがの行動力である。

「フミヤくんは早生まれで、学年は僕のふたつ上。明るくて前向きで、言葉が多いわけではないんですけど、プレーでみんなを引っ張ってくれる存在でした。メンバーのなかでは一番年上なのに、これっぽっちも威張らない。むしろ、周りがこぞっていじりまくり、本人もそれを楽しめるタイプ」

なるほど、早川の人物像の輪郭が浮かぶ。そうそう、と高木大が言葉を続けた。

「U‐17ワールドカップのアジア最終予選、そのゲーム、フミヤくんはサイドバックで出場していたのかな。試合中、『ちょっとすみません!』と審判に言ってトイレに行き、すぐに帰ってきたことがあった。そんなの見たことがない。すげえなって笑っちゃいましたよ」

早川は新潟ユースから筑波大に進学し、新潟に加入している。いつか選手を引退したあとは、教職の道に進みたいと語っていたそうだ。

「U‐17日本代表のチームが解散するときの寄せ書きには、『おれの生徒になれ!』と書かれていました。えっ、なにそれって、まじまじと文字を見ちゃいましたね。チームになじめていない人にさりげなく声をかける気遣い。どんなときでも謙虚さを忘れない態度。そういったフミヤくんの姿勢は見習いたいと思って、これまでやってきました。真面目な人だから、身体のことにもきちんと向き合うはず。必ず、またピッチで会える。僕はそう信じています」

高木大は早川門下生になるのもやぶさかではないようだが、それはずっと先でいいと考えているだろう。

U‐16、U‐17日本代表で早川史哉とチームメイトだった高木大輔。

U‐16、U‐17日本代表で早川史哉とチームメイトだった高木大輔。

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