【無料記事】【練習レポート】『いぶし銀の輝き』高木純平(2016/02/05)
■「周りの選手を知り、自分のプレーを知ってもらうことが大事」(高木純平)
始動からおよそ半月。このくらいの時期になると、新加入選手のプレースタイル、特長がはっきりと像を結び、練習から試合のイメージがどんどん広がってきて楽しい。
船山祐二は予想したより攻撃色の強いプレーヤーだった。あの左足はお金が取れるね。ミドルレンジから一閃、ボールがホップしてネットに突き刺さる。
平智広はボックス内の落ち着いた対処が印象的。ニューイヤーカップのFC東京戦では、ピンチに際して迂闊に飛び込むことなく、冷静にシュートコースを塞いだ。左足のフィードがぶれることもあったが、試合を重ねるにつれ徐々に周りの動きと合ってきた。
そして、高木純平。熊本生まれ、清水育ちの33歳だ。先日の横浜F・マリノス戦では、途中から中盤の底で起用され、やがて右サイドハーフへ。周囲とスムーズに連動し、まるで違和感を感じさせない。攻守にわたって必要なプレーを感じ取れるのは、豊富なキャリアのなせる業か。
この日のクロス&フィニッシュのトレーニングでは、右サイドから数種類のキックを使い分け、いずれもゴール前の選手にピタリと合わせてみせた。
「周りの選手を知り、自分のプレーを知ってもらうことが大事。いろいろなキックができるのは僕の特長ですから、意識的に見せていこうと蹴り分けました」(高木純)
なかでも鮮やかだったのは、高木純がストレート性のクロスを入れ、平本一樹がダイレクトで蹴り込んだシーンだ。
練習終了後、高木純と並んで歩く平本は「純平は腹黒い。こいつの笑顔にだまされちゃいけませんよ」。聞けば、一昨日のシャトルラン(往復持久走)で、「全然ダメっす」と話していた高木純が、さっさと平本を置き去りにし、ガンガン走りまくったのだそうだ。
はいはい、テスト前にまったく勉強してないと嘆きながら、98点を取るタイプね。
「それですよ、それ。まったく油断ならない」と平本は憤慨するが、真に受けるほうもどうかと思うのである。見るからに勤勉で、この手の選手が走れないわけがない。
高木純は昨季をもって長年過ごした清水を契約満了となり、東京に新天地を求めた。
「清水の頃はベンチスタートで試合に出たり出なかったりというのが多かったですね。もやもやした気持ちはあったと思います。それで出場機会を求め、札幌や山形にお世話になりました。ただ、僕にとって清水は特別で、育ててもらった恩がありますから、少しでもチームのためになるように行動したつもりです。クラブを出ることになったのは、さみしかった、のひと言かな。それ以外に言葉が見つからない」
今回、東京ヴェルディへの移籍は胸に期するものがある。
「自分がまだまだやれる、チームに貢献できるところを見せたい。選手としての価値を高めなければ移籍した意味がないです。清水にも僕を切ったのは失敗だったと思わせないとね。必要としてくれたヴェルディのために、プライドをもってやりますよ」
15年間のプロ生活で、「キーパーとセンターバック以外はすべて経験した」というユーティリティプレーヤーだ。適応力の高さはずば抜けている。今季、J1昇格を目指す戦いでカギを握るのは、高木純のような地味ながらもサッカーを知る選手なのかもしれない。