大宮花伝

【無料記事】完敗。J1クオリティーを体感した選手たちの胸中【天皇杯・鹿島戦/マッチレビュー】

■天皇杯全日本サッカー選手権3回戦・6月22日(水)19:00キックオフ
NACK5スタジアム大宮/6,161人
大宮アルディージャ 0-3 鹿島アントラーズ
【得点者】鹿島/16分 仲間隼斗、52分 鈴木優磨、90分 上田綺世

▼“試す”“見る”の色合い濃く…

J2で20位の大宮。J1で2位の鹿島。現状の差が明確にあらわれた0−3の完敗だ。しかも、大宮は直近のリーグ千葉戦の先発から志村滉以外、10人を変更。一方の鹿島はリーグ戦と顔触れを変えつつ、核に三竿健斗、ディエゴ・ピトゥカ、仲間隼人、鈴木優磨と主力組を残した。古巣戦となった相馬直樹監督は昨季まで鹿島を指揮し、戦力を熟知しながらの大宮のメンバー構成。相馬監督がその意図を説明する。

「我々にとって天皇杯ももちろんも大事だが、リーグ戦があるということも含まれている。前回の天皇杯も人を変えたなかでやってもらったが、ゲームのなかで選手たちは何ができるのかを見極められていない部分もある。選手一人ひとりに期待して、プレーをしてもらった。自分が出たいと言う思いがあるなかで出てくれたと思っている。そういったものは出してくれたものは多かった」

J1の名門を相手にリーグ戦を見据えて、“試す、見る”といった色合いが濃かったようだ。

開始5分でピンチが訪れた。FKの流れから志村がファンブルしたのを見逃さず、仲間がシュート。田代真一がゴールカバーに入ったものの、先行きを暗示するシーンだった。攻められる流れが続いて16分、鹿島の左サイドのスローインから逆サイドまで展開されて仲間が先制点を蹴り込んだ。相馬監督は「こういうゲームをアップセットするには先に取らせてはいけない」と番狂わせを狙っていたがうまくいかなかった。

直後、河田篤秀のクロスに栗本広輝がヘディングシュート放ったが枠を越えて同点機を逸す。ボランチ出場の栗本は相馬監督になってからの練習試合で同位置起用されており、この日は「大橋(尚志)選手ではなくて、僕の方が前に出て行ってほしいというのがあった」と積極的にゴール前へ。「そういった点をああいう形で出せたのは今後のリーグ戦に向けてのつながるのかなと思う」と生かすつもりだ。

後半も鹿島の選手たちは終始、余裕があった。

52分、左CKの流れから右へと揺さぶられて土居聖真のクロスに鈴木が合わせて2失点目。相馬監督は形勢の挽回を目指して60分、菊地俊介、矢島慎也、奥抜侃志とリーグ組を投入。しかし、鹿島もメンバー交代で圧力を維持したために、なかなか効果は見込めなかった。それでも83分、武田英寿、吉永昇偉、途中出場の泉澤仁、再び吉永とつながって見せ場を創出。85分は奥抜がドリブルで相手をかわしながらシュートを放った。

吉永が当該シーンを振り返る。「相馬さんはあそこのポケットのところを(普段から)どんどん取りに行けと言っていて、あれは本当に相馬さんの描いているものが出たシーンだと思う」との理想の形ではあった。「僕のクロスのところでもっと質の高いものが上げられれば得点、もしくはCKが取れた。やはりそういうところをもっと自分自身、向き合って練習しないといけない」とJ1のトップクラスの実力を肌身で感じた。

また、90分の上田綺世のダメ押しゴールが圧巻。78分に出場したばかりで仕事を果たす勝負強さに目を見張り、はっきり言って大宮の守備は歯が立たなかった。相馬監督は試合後、「少しゲームから離れている選手が多く出た形になったが非常に勇気を持ってプレーしてくれたと思っている」と総括。千葉戦で足りなかった部分を出せても勝てない。戦前の予想を覆す“ジャイアントキリング”は遠かった。

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