「ゼルビアTimes」郡司聡

リカルド・ロドリゲス監督(浦和)①/天皇杯制覇とアジアへの帰還。“リカ将”改革1年目の光と影【勝手にJ2監督列伝・番外編】

コロナ禍の影響により取材ができなかった頃、ゼルビアTimesで密かに人気シリーズと化していた【勝手にJ2監督列伝】。今回は復刻版の番外編として、昨季から2シーズンにわたって浦和レッズを率いた元徳島監督、リカルド・ロドリゲス監督の2シーズンを前編と後編に分けて考察してみた。

リカ将”の前任者は今季群馬を率いた大槻毅監督だった

▼“ハイブリッド”なチームへの変貌を託されて

2020シーズンのJ2リーグで徳島ヴォルティスを優勝に導いたリカルド・ロドリゲス監督は、J1昇格を置き土産に浦和レッズの指揮官として“個人昇格”を果たした。ロドリゲス監督が就任した2021シーズンは、浦和が3年計画を打ち出していた過程の2年目。大槻毅監督(ザスパクサツ群馬監督)の退任に伴い、浦和の新指揮官として迎え入れられた格好だ。

ロドリゲス監督の就任に伴い、フットボール本部が出した当時の声明には「ハイブリッドなサッカースタイル(カウンタースタイルとポゼッションスタイル)」というキーワードが記されていた。大槻レッズは平たく言えば、“堅守速攻型”。そのため、ボール保持で相手を崩すことを不得手としており、コンパクトな陣形と前線からのプレッシングをベースとしたチームスタイルが発動できないゲーム展開になると、途端に八方塞がりに陥った。

もっとも“リアクション色”の強いチームスタイルでは、自身のクオリティーを発揮することに喜びを見い出すJ1の選手たちはフラストレーションが溜まりやすい。例えば2019年のAFCチャンピオンズリーグでは大槻監督の下、決勝まで進出したが、相手との力関係を踏まえた上でリアクションに徹することが勝利への近道と理解できれば、選手たちも割り切って戦える。しかし、力が拮抗したJリーグでは、割り切ってリアクションに徹し続けることは、我慢の限界があるというものだ。

そのため、大槻体制でベースとなった速攻型のチームに、遅攻でも相手を崩せるエッセンスを注入する。その方法論は別として、ボールを保持しながら相手を敵陣に押し込んでサッカーをすることが考え方の根底にあるロドリゲス監督に対して、白羽の矢が立つのも、自然の成り行きだった。

遅攻でも速攻でも崩せる“ハイブリッド”なチームを構築する。4年の時間を掛けて、徳島をトップリーグに導いた手腕が、浦和でもいかんなく発揮されるのか。就任当初、J2クラブのサポーターは、ロドリゲス監督の浦和での動向を気に掛けていたに違いない。

こうして開幕したチャレンジ1年目のシーズン。“リカ流”の浸透は、意外にもスムーズだった。

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