「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】【蹴中(しゅうなか)コラム・金曜臨時版】第11回/再出発の9月から収穫の秋へ


▼分岐点に立たされているチーム

チーム主将リ・ハンジェはチームの置かれた現況を次のように話している。

「いま、チームは分岐点に立たされている」

先の天皇杯・神奈川大戦では、普段は出場機会の少ない選手が出場していたとはいえ、攻守の切り替え、セカンドボールへの出足、そしてボールサイドに人数をかける基本的な守備戦略など、「チームのベースとなる部分」(相馬監督)で劣るという由々しき事態にあった。“誰が出てもクオリティーが落ちない”チーム作りは一つの理想形だが、まだまだ現実は厳しいことを神奈川大に突き付けられた格好だ。

天皇杯で敗退したことにより、週末に公式戦がないため、チームは4日、J1・柏レイソルとのトレーニングマッチを組むことになった。対戦相手の柏はその前日に天皇杯2回戦・奈良クラブ戦を戦うため、柏のメンバーは不透明だが、時には勝負に徹した現実路線への切り替えも可能なパスサッカーを標榜する柏とのトレーニングマッチは、今後のJ2を戦う上で良いスパーリング相手になるだろう。

柏戦における一つのテーマは「チームのベースとなる部分を出せるか」(相馬監督)。当然、町田もどんなメンバーで戦うか。不透明な部分は大きいが、素早い攻守の切り替え、ハイラインを基軸としたコンパクトな3ラインなど、チームコンセプトを忠実に表現することが大前提の試合となる。ラスト12試合に向けて、再び自分たち本来のあるべき姿を取り戻し、今後のスタンダードとなり得る戦いを示せるか。この柏戦は、ただのトレーニングマッチではない。

天皇杯の敗退で、よりラスト12試合がクローズアップされることになった9月の初旬。天皇杯に出場したセカンドチームの選手たちにとっても、一つの正念場でもある。松下は言う。

「残り12試合でシーズンはもう3カ月もない。ラストスパートに入ってきたし、これから先発メンバーに食い込めるか、食い込めないか。それが決まる時期になった。以前の試合にあまり出られなかった選手たちが底上げをしないと、ココから残りの12試合はキツイと思う。そういう自覚を持たないといけない」

公式戦はリーグ戦以外になく、セカンドチームの選手たちがアピールできる機会は今後より限られてくる。その中で定位置奪回の足がかりをつかむことは容易ではないが、その壁を乗り越えてこそ、その先に見える景色は何物にも代えがたい。

もちろん、レギュラーメンバーにとっては、簡単にサブ組にポジションを譲るつもりはないし、J2定着への戦いがまだ終わったわけではない。チーム主将は言う。

「FC町田ゼルビアがもう一段階上に行けるか、このままのチームで終わるのか。それが問われている」

J2残留の戦いに終わりを告げていない町田にとって、リーグラスト12試合は一つひとつが正念場である。激動の8月を経て、収穫の秋へ。J2復帰初年度のチャレンジも、シーズンの佳境に入ってきた。

Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)
Photo by ©FC町田ゼルビア

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