「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】J3第39節・長野vs町田/長野・衛藤元監督、勝又慶典選手、佐藤悠希選手、大橋良隆選手、町田・相馬直樹監督コメント

▪︎明治安田生命J3リーグ第39節11月23日(月・祝)13:00キックオフ
南長野運動公園総合球技場/7,317人
AC長野パルセイロ vs FC町田ゼルビア
【得点者】長野/64分 佐藤悠希 町田/74分 鈴木孝司

 

■衛藤 元監督(長野)
——まずは試合の総括をお願いいたします。
「今シーズンラストゲームということで、選手には、『南長野という自分たちのホームスタジアムで優勝カップを掲げさせるということを阻止するんだ』という気持ちでこの1週間取り組んできた。その中で、しっかりと守備から入るために、守備をいつもとちょっと違う方法にした。コンパクトにしてセカンドボールを拾うという部分は最後まで狙い通りいけた。相手のCBが出てきた背後を狙う、ということを決めていたので、(佐藤選手の得点は)満足している。追加点に関しては、高橋(駿太)選手を入れて、背後を狙う動きはタイミングが合わず、オフサイドとなったが、得点のにおいはしていたので、2点目、3点目といきたかった。警戒していたクロスボールでやられた、ということは、来年の課題として残ったと思う。終了後のミーティングでは、(今回優勝を阻止したことで)来年、ここ南長野で優勝カップを掲げる準備ができた、という意味ではパルセイロにとって、良い終わり方だと思うし、『来年はパルセイロが優勝カップを掲げよう』と選手たちには頑張ってくれと伝えた。私も疲れた中だが、満足している」

——勝又選手と都並選手を先発で起用し、山田選手をベンチからも外した狙いを教えてください。
「山田選手はボールを運ぶ特徴があり、都並選手はしっかりとボールを入れることのできる選手で二人ともタイプが違う。町田がハイラインなので、ボールを左足で巻きボールで置きにいける都並の特徴を生かして、相手のラインを下げたかった。勝又を入れたのは古巣だからということではなく、背後の動き出しが多い、タイミングも良いので、西口と都並はボールを入れることができるので、その受け手として勝又を起用した」

——来年を占う意味でも大切な一戦として、財産の残るゲームにしたいと話していたが、その点はいかがですか?
「これは僕の主観ですが、非常にパルセイロはポゼッションやきれいなサッカーで主導権を握るということがあったと思う。でも前節の相模原戦で(フィジカル)コンタクトの部分で課題が出て、コンタクトに対して疑いもなくやってくれたことでひとつまた来季に向けて積み上がったんじゃないかと思う。途中から町田さんの足が止まったという要素もあったが、その中でポゼッションでゲームを進められたことは今年1年を締めくくるという意味では良かったと思う」

——美濃部(直彦)監督が退任されてから、衛藤監督になられて8勝4分2敗の戦績で終えました。戦い方やメンタルを含めて変えたことは?
「美濃部監督が築いたベースは素晴らしいものだと勉強になったし、すべてのベースを変える必要はなかった。ただ運動量の面など、ポゼッションの中での縦への動き出しが低いことやセカンドボールを取れないという課題があった。その中で徹底して戦えることを植え付けてきたし、走るという部分で有永を起用したりと、組み合わせの部分を変えてだけで大きくは変えていない」

——山口の結果次第では町田に優勝カップを掲げられることになったわけですが、情報は逐一入れていたのですか?
「情報は入っていました。ただ最後は町田が引き始めたので、それが体力的なものなので、意図してやったのかは分からずに、最後の6分はボールを握ることができたし、相手はなぜか攻める気がなかったように見えたので、(山口の)情報が(町田に)入っていたのかと私自身は戸惑っていた。そのまま続行して1点を取ろうとしていたし、本来はパワープレーなどもっとバランスを崩すけれども、1点を取られずして1点を取りに行こうというテーマだった。ビッグチャンスは2回あったのであわよくば入ればという形だった。そう思いながら進めていたし、情報が入っていたと言えば入っていたが、正確な情報なのか、分からず興奮していてそういった試合運びとなった」

——今日の戦い方は相手を研究してどう対処するかということで導き出されたと思います。ただそうなったぶん、積み上げてきた自分たちのサッカーが疎かになったというか、割合が減ったという印象なのですが……。
「そういう印象を受けましたか? 僕は全然そう思っていない。サッカーは生き物なので、相手のストロングポイントを消さなければいけない必要があるし、自分たち本位のサッカーばかりをやるわけにはいかない場合もあるし、それを植え付けながらもウチのやり方を変えるというよりも、1トップ2シャドーでシャドーはSBを管理して、相手の守備4枚に対して、ウチは7枚で守り相手は6人で攻めてくるから相手よりも多い枚数で守ることができる。起点もたくさんできたし、カウンターもしかけられたと思う。いつもとは違う形に見えたかもしれないが、これがサッカーだと僕は感じている」

——最後終わったあと泣いているように見えました。
「今日の目標は町田に優勝カップを掲げさせないということだったので、その中で情報の錯誤があって、町田が喜んだのでそれに対して悔しい思いがあったというか、あと選手が握手をしに来てお疲れ様でしたと言われて一緒に戦ったことで涙したというか、涙もろいところがあるので、涙というか感動していた」

——モチベーションという意味では、相手と違う中で難しい試合となったと思うが、選手の気持ちに対する評価はいかがでしょうか?
「いち選手の気持ちの前に、やり方と選手同士の距離感が合っていたのは、この試合にかけるモチベーションやコンパクトをテーマに掲げてやって、言葉だけにならずに一人ひとりがボールに行くという役割をハッキリさせて、ミーティングで誰が誰に行くと徹底させたので、それがある中で距離を詰めてセカンドボールワークで戦えたことは非常にできていた。僕の仕事は(そういった戦い方を)植え付けるまでであって、そこから先戦うのは選手。外的なモチベーションはこちらで付けましたが、内的なモチベーションは選手たちが植え付けたものがあって、それをくすぐることができたゲームだったと思う。特に仙石(廉)選手はコンタクトに弱いイメージはあって、J2でもウチでも出られず、いろいろな選手と話した中で、『あなたはこれが課題で出られないよ』と話したし、信用して使うから戦う気持ちを出してくれと選手の心をくすぐりながら、一人ずつに話して今日のゲームを迎えてやってくれたことは非常に感謝している」

——町田に優勝カップを掲げさせないという今日の目標を達成できたことで、今後にどのようにつながっていきますか?
「山口、町田は上位で、そして町田はコンパクトでルーズボールに強く、スピードもある。山口はテクニカルで、この2チームはなかなかウチにマッチングしない相手だった。町田相手に引き分けたことは来季に向けて、このベースプラス強化する部分が分かって終えられたことは良かったと思う」

——具体的に強化する部分とは?
「中盤からスルーパスを通せたり、いろいろなシステムができるようなSBがいたり、4バックをできるような人材やもっと走れる選手など。私が来年もやることが決まっているわけではないので、言えることはないが、それらが今年足りなかったことだと思う」

 

■MF 13 勝又 慶典(長野)
割り切って守備的に戦ったから町田はやりづらかったと思う
「1点を取るまでのこっちのゲームプランどおり。ブロックを敷いてカウンター狙いでセットプレー以外は相手にそんなにチャンスを作らせていなかった。カウンターで仕留めたところまでは完全にこっちのペース。セットプレーの展開から点を取られたことは仕方がないけど、流れの中ではやられていないし、割り切って守備的にしたから町田はやりづらかったと思う。個人のプレーとしてはもう少しカウンターを狙いたかったけど、守備の指示が多かったからある程度のゾーンを埋めながら、プレッシャーを厳しく行っていた」

 

■MF 7 佐藤 悠希(長野)
いまのお前のプレーでは昇格できへんと言われているようなシーズンだった
「(パク・)ゴンちゃんが前向きに良い位置でボールを持てていたし、相手のディフェンスが最終ラインを駆け引きしてくることは試合前から分かっていた。やっている中でも高めにラインを設定してきていたから裏は狙っていた。良い形でパスをもらえて決められてホッとしている。町田と試合をすると球際がキーポイントになってくる。今週の練習からそれを激しく言われていたし、それなりに表現できていたと思う。(追い付かれるまではゲームプランどおりに試合を進められていましたか?)相手のイヤなところを突けているという印象もあったし、相手にやられたくないところは守れていた。プランどおりにできていたと思う。(球際が激しかったですが、今日の試合がスタンダードですか?)いつもよりは気合が入っていた。(シャドーのポジションは守備のタスクもこなしながら攻撃の良い部分を出すという難しい仕事だと思います)それは美濃部監督のときからもう1年を通してやってきたことだし、あのポジションは汗をかかないといけない。そこは惜しみなくやる。先制点を取ってから押し込まれる展開が多かったから、どうにか攻撃的な姿勢を出したいと思っていた。長いボールを入れられて、セカンドボールの奪い合いみたいな展開になって、難しかったけど、今までに比べれば守備ばっかりという感じではなく、前から行っているシーンも多かったので、今までよりは良くなっていたのかなと。(この1年はどんなシーズンでしたか?)もう力がないなと実感した。いまのお前のプレーでは昇格できへんと言われているようなシーズンだったので、来年に向けてしっかり努力したいなと思う」

 

■MF 5 大橋 良隆(長野)
全体の守備意識に若干の修正をして臨んだ
「勝っても負けてもたくさんのお客さんが来てくれたし、スタンドとピッチの距離の近さはほかのスタジアムにはない。身近に選手を感じてもらえることと、自分としては1年間ありがとうございましたという感謝の気持ちを伝えようと試合後に挨拶に回っていた。(最終節にして戦術を変えたということですが?)少しだけ、今までやっていることにプラスして、町田の能力も高いし、しっかりと守備をするというプランだった。全体の守備意識に若干の修正をして、前節の相模原戦でもセカンドボールを拾えなかったのでそういう意識を踏まえて戦った。今日は入りから良かったと思うし、前半に関してはやりたいことをやれていた。終わりは始まりじゃないけど、選手もレベルアップしないと勝てないことは分かった。でも逆に個々のレベルアップをできるチャンスさと思う。それを一人ひとりがやっていくべきでは。正直、勝ちたかったが、優勝が懸かっている相手に引き分けて、一歩抜け出せば通用することになっていくと思うので、そういう部分では前向きに捉えたい。僕たちが1点を取ってから、町田が前からプレスをかけてきたので、もっと時間を使えれば変わったと思う。オープンな展開というか、ボールロストが増えて、という状況が多くなった。ちょっとしたミスでCKから失点した。もう少し落ち着ければ、ゲームをコントロールできたのかなと思う。受け身になった部分はあった」

 

■相馬 直樹監督(町田)
ーーまずは総括をお願いいたします。
「まずは、たくさんの方々に遠く長野までお越しいただきました。本当に感謝しておりますし、一緒に喜びたかったんですけど、今日は勝利を掴めなかったことで、優勝できなかったかなと思います。我々をサポートしていただいた方に感謝申し上げると共に次の2試合、別の大会という形になりますけど、もう一度サポートいただければと思います。2戦目はアウェイになりますが、次は一緒に喜べるようにしたいと思います。今回は、ぬか喜びという形になってしまいましたが、先ほども申しましたが、勝つチャンスもあり、勝っていればJ3優勝となっておりました。そういう意味では、勝つ力が足りなかったと思っております。今日のゲームに関しましては、長野さんが我々をリスペクトしていただいて、引いて守ってくるという形になりました。カウンターを狙ってくる相手に対し、やはり狙われた形で失点されてしまいました。しかし、相手が守ってくる中で、セットプレーでありましたが、こじ開けることができたことは次につながるのかなと思います。いくつか決められるチャンスがあったと思うんですけど、そこを決め切る力であったり、先に失点してしまったことも含めて、勝つためにもう一つ何かが足りなかったのかなと思います。まだ、細かいことを思い出すパワーがないので、何とも言えませんが、大事なことは選手には話しましたけど、1日短い間隔で第1戦目を迎えますが、早く気持ちを切り替えてファイティングポーズをとれるような状態に持っていく必要がありますし、これまでやってきたことをピッチの上で表現できるようにしていきたいと思います」

ーー後半同点になったあとに山口さんがリードされている状況で終われば、昇格できるという経過は把握していたのでしょうか? そしてそれを受けて、選手たちにはどんな指示や言葉がけをしていたのでしょうか?
「私は知りませんでした。なので選手たちも知らなかったと思います。情報は当然入っていたと思いますが、それを監督の僕のところまで情報としてあげるかは任せておりました。そういう状況の中でそれを選手に伝えるかどうかではなく、今年1年間、目の前の試合に集中することを選手たちに伝えてきていましたので、どうしても必要な情報であれば、耳に入れなくていいよと伝えてありましたし、勝つためにいくつかのカードを切りました。実際それは形にならなかったことが正直なところです」

ーーJ3の代表として入れ替え戦に臨んでほしいという気持ちもあるのですが、改めて入れ替え戦に向けての意気込みをお願いします。
「昨年、長野さんが挑戦して破れなかった壁ということで、簡単な壁ではないと思っています。だからこそ、優勝して昇格したいという想いがあったんですけれども、こうなった以上はそこに向けて頑張るだけです。これまでを振り返ると苦しい状況からここまで来たということで、同じように入れ替え戦も苦しい壁であると思いますが、我々はJ3のライバルたちに一戦一戦、戦って磨かれてきましたので、全力で相手にぶつかって残り2戦ありますが、昇格を目指して最善を尽くしたいと思います」

ーー前節が始まる前は、3位の長野と勝ち点5ポイント差で、長野の地元メディアはいろいろと勝ち点の計算をしていたのですが、町田さんから見て、(一つ下の順位である)長野をどう見ていたのか、それともあまり気にしていなかったのか、いかがでしょうか?
「正直なところ、選手たちはプレッシャーは感じていたと思います。ただ選手たちには2位をどう確保するかどうかという話は一度もしてきませんでした。常に上を見て戦おうと言っていました。すごく勝ち点が離れた時期もありましたが、それでも上を見て戦うということを選手たちが我慢強く粘り強く、突き詰めてくれた結果だと思います。あともう一歩そこを乗り越える力というのを僕が足してあげることができなかったということは残念で申し訳なく思っています。幸いまだ取り返せるチャンスがもう一度ありますので、そこで取り返せるように頑張りたいと思います」

ーー今日の試合の中で次の試合に活かせる収穫や光明はありましたか?
「入れ替え戦を出ることを考えながら戦っていたわけではないので、何とも言えませんが、一つはこのようなプレッシャーがかかる中で、選手たちが自分たちの力を発揮してくれたことは良かったと思います。当然プレッシャ-というところで長野さんの方が少なかったと思いますし、長野さんの方が意地という部分でも自分たちの力を発揮しやすい環境ではあったと思うんですけれども、そういった中でうちの選手が自分たちの力を発揮してくれたなと思っています。プレッシャーが懸かる試合なので、それは生きてくると思います」

ーー前回のホーム最終戦後の記者会見で優勝がかかる試合を経験できることは選手たちにとっては貴重な経験になると思いますと言っていましたが、今回、惜しくも優勝を逃してしまった経験を相馬監督自身、選手たちにとって今後どのようにようにつなげていきたいですか?
「そうですね。今は優勝を逃したということを考えるところではないと思います。まずは昇格がかかった試合が控えていますし、この経験もなかなか経験できることではないので、大きな経験の一つになると思いますし、当然これは成功した経験として残したいと思いますので、あと2週間しっかりとやっていきたいと思います」

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