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「なぜ判定は覆ったのか。『プロセスに問題がある』と水戸側は指摘。物議を醸した長崎戦のPK判定について振り返る」【ニュース】※無料記事

物議を醸した第18節長崎戦90+13分のPKの判定について振り返る。
90+5分、ペナルティエリア内に切り込んだ長崎のマテウス・ジェズスがスライディングで止めようとした前田椋介に倒される。この時、榎本一慶主審が下した判定は「ノーファウル」。プレー続行のジャスチャーも見せている。

そして、こぼれたボールを水戸の選手がラインの外にクリア。榎本主審は長崎ボールでのスローインを指示した。

その後、「ノーファウル」の判定が覆されるわけだが、もし「審判団の話し合い」で判定が変わることとなったのならば、この段階で主審が試合を止めて審判団による話し合いが行われていたはず。
しかし、この時、試合が止まったのはスライディングした際に負傷した前田の治療のためであり、審判団が集まって直前の判定に対する話し合いが行われることもなく、インカムでのやり取りも行われていなかったという。その状況から、判定に対して疑問を投げかける審判員はいなかったと考えられる。

判定を不服とした長崎の選手たちは試合が止まると、審判に猛抗議。出場している選手たちは主審のもとに、ベンチにいる選手とスタッフが副審のもとに集まって判定への抗議を行った。特に副審への抗議は第4の審判員がベンチに戻るように指示をしてもおさまらならなかった。

そして、榎本主審が事態を収束させるために長崎ベンチに向かい、選手とスタッフをベンチに戻らせてから、下平隆宏監督と約1分間の会話を交わした。すると、榎本主審の態度が変わり、その後に「審判団の話し合い」が行われることとなった。その話し合いを終えた榎本主審は「ノーファウル」の判定を取り消し、ペナルティスポットを指さして「PK」の判定を下したのだった。

プレー再開前に判定が覆ること自体、規則上問題はない。
「プロセスに問題がある」
水戸クラブ関係者はそう憤る。

前述の通り、プレーが切れた際に審判団で話し合いが行われて判定が覆るのならば、まったく問題はなかった。しかし、そうではなかった。
「一方のチームとのコミュニケーション」があった後に「審判団の話し合い」が行われて判定が覆ったことに対して、水戸側が「抗議によって判定を覆した」と捉えるのも無理はない。しかも、それが勝敗を分けることとなってしまっただけに容易に受け入れられるものではない。

日本において、J1リーグこそVARが導入されているが、それ以外のサッカーの試合において、審判員にすべての判定の権限は委ねられている。人間の目で見て判定しているだけに、すべてを完璧に判定することは不可能に近い。だからこそ、サッカーというスポーツが成り立つ大前提として「抗議をしても判定は変わらない」というものがあり、審判が下した判定を受け入れるという理解のもと、審判と選手との信頼関係は築かれている。だが、今回の判定はその大前提を根幹から揺るがす可能性があると言わざるを得ない。

クラブは今回の判定のプロセスに対しての意見書をJリーグに提出する予定だという。なぜ判定は覆ったのか。その経緯の詳細と理由について、Jリーグ側の説明が求められる。

※この記事は映像を確認した上、複数の関係者の証言等をもとに執筆しました

(佐藤拓也)

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