デイリーホーリーホック

「新規事業『GXプロジェクト』が始動。Jクラブ初のソーラーシェアリングや大豆珈琲の6次産業化に挑戦。パネルディスカッションも開催」【HHレポート】※無料記事

【写真 米村優子】

5月15日、水戸市泉町の水戸市民会館ユードムホールで水戸ホーリーホックの新規事業「GX(グリーントランスフォーメーション)プロジェクト」の詳細が公開され、Jクラブ初となるソーラーシェアリングや大豆珈琲の6次産業化に取り組むことが発表されました。

【写真 米村優子】

地域密着型クラブである水戸は、2021年から始めた農事業「GRASS ROOTS FARM」を通じて、全国3位の農業県である茨城の魅力を発信し、地域課題の解決に取り組むとともに、圃場を活用したファンサポーター向けのイベント、ホームゲームで地域特産品の販売など、多岐に渡る活動を実施しています。
そんな中、2022年からホームタウンの課題解決に向けて、クラブと地域のキーパーソンで具体的なアクションを考えるワークショップ「ホームタウンのみらいダイアログ」を開き、茨城県の農家の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加、地域経済の衰退など、地域が抱える現状への理解をさらに深めました。
大雨や台風などで中止となった試合数が10年で約4倍になっているJリーグは、サッカーがある風景を守るため、昨年から気候変動に対するアクションに取り組んでいます。

そんな背景のもと、水戸は化石燃料をクリーンエネルギーに転換して脱炭素化社会を構築していく取り組みであるGX事業を新たに展開。
城里町で新たに借用した約2000㎡の耕作放棄地で大豆を育て、その農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置し、太陽光を農業生産と発電で共有するソーラーシェアリングを実施します。
発電した電気は自家消費するほか、地域の電気小売業者に販売。
地産地消の再生可能エネルギーを広げながら、カーボンニュートラルを実現していきます。
ソーラーシェアリングに特化した事業を展開する株式会社TERRAをGXパートナーに迎えてプロジェクトを進め、現在は太陽光パネル販売や施工会社や電力会社、周囲の地権者などとさまざまな契約を進めている段階。
環境省やJリーグの支援も受けながら、早くて1年後から本格始動する予定です。

【写真 米村優子】

その農地では大豆を有機栽培し、それを加工して大豆珈琲をGRASS ROOTS FARMの商品として販売する6次産業化に挑戦します。
栽培する品目に大豆が選ばれた理由の一つは、2022シーズンのホーム最終戦や昨年5月の熊本戦で販売された大豆ミートバーガーの考案者である守谷市の田島修太さん(茗溪学園中学校2年)の存在があります。
田島さんは2022年、選手やパートナー企業のキャリア形成に関する水戸独自の知識習得・人材育成研修プログラム「Make Value Project(MVP)」で当時は小学生ながら講師を努め、環境問題の解決策の一つとして大豆ミートを提案し、試食会を実施。
その後はクラブとのコラボレーションにより大豆ミートバーガーがスタジアムグルメとして販売され、ホームタウンの社会連携活動を表彰する「2023Jリーグシャレン!アウォーズ」で「明治安田 地元の元気賞」を受賞しました。

そんなクラブにとって重要な品目である大豆を加工品した大豆珈琲は、スポーツ選手にとって特に必要なタンパク質やビタミン成分が多く含まれ、妊娠中や授乳中でも安心なデカフェである上に、女性ホルモンの分泌を促すイソフラボンも豊富。非常にヘルシーなオーガニックドリンクです。
加工は地元の障がい者施設に委託し、誰もが同等に生活ができる社会を目指すノーマライゼーションの実現も同時に取り組んでいきます。
また、ふるさと納税の返礼品としての採用を目指し、各自治体に打診していく予定です。
新事業を担当する経営企画室の瀬田元吾さんは「この取り組みが城里町、ホームタウン、全国各地、海外へと広がり、一つの地域創生のモデルとなれば素晴らしく思います」と語っていました。

【写真 米村優子】

そのGXプロジェクトと連動した「2024 3rd UNIFORM」が発表され、髙岸憲伸選手が当日届いたばかりのレプリカユニフォームを着用して登場しました。
コンセプトは新芽三役。
ホーリーホックから芽生えた新しい可能性、つまり緑色の「新芽」が水面に広がる波紋のように地域やサッカー界、スポーツ界を通じて広がり、どこまでも青く透き通る青空のような美しい世界を作っていきたいという想いが表現され、「三役」はクラブが地域と手を取り合うことで、多様な役割を担っていく意志を折り重なる三角形で表しています。
フィールドプレイヤーは緑と青のカラーリングで、GKは再生可能エネルギーの太陽光をイメージしたオレンジのグラデーション。地域を明るく照らし、地域の方々を心身ともに豊かにしたいという想いが込められています。
このユニフォームは8月31日愛媛戦、9月22日岡山戦、10月6日清水戦のホーム3試合で着用され、髙岸選手は「シンプルに爽やかなイメージ。今年のホームやアウェイのデザインとはひと味違って、本当に可愛いデザイン」と気に入った様子。
そして今年初めに鉾田市のイチゴ農家を訪ねた自身の出来事を紹介し、「資材を一度に大量発注してトラックの配送で使用される石油の量を減らし、二酸化炭素の排出を削減することを意識しているという話を聞いたばかり。クラブの取り組みとフィットする話の種をいただき、新芽が開きそうだなと思いました」と環境問題に対する意識が高まったことを語っていました。
「2024 3rd UNIFORM」はレプリカのみの販売となり、5月31日の23:59まで公式オンラインストアで購入できます。

【写真 米村優子】

第2部では「いま、自分たちがミライのためにできることは?」と題してパネルディスカッションが開催されました。
Jリーグでサステナビリティ領域を担当する辻井隆行さんがファシリテーターを務める中、西村卓朗GMや田島さん、元日本代表で現在はFC東京のコミュニティジェネレーターや長野県にある農園「NAO’s FARM」農場長の石川直宏さん、JA茨城県中央会広報担当の萩谷茂さんがパネラーとして登壇し、気候変動アクションの重要性や、その中でJクラブが担う役割についてディスカッションしました。

JA茨城県中央会広報担当の萩谷茂さん
【写真 米村優子】

冒頭で西村GMは水戸が農事業を始めた経緯や、“会社の憲法”と呼ばれる定款に農事業に関する記載があることを明かすと、「サッカークラブの定款に農業が書いてあるとは素晴らしいですね」と辻井さんは驚きながら称賛。
異業種の水戸が農業参入したことについて萩谷さんは、「ホーリーホックが農業に興味を持つことによって、農業のファンも増えると思っています」と期待を寄せていました。

小学生時代、全Jクラブに環境問題の取り組みに関する質問メールを送り、最も興味を示した水戸とコラボレーションした田島さん。
環境問題の解決策の一つとして提唱する大豆ミートを使ったハンバーガーを販売したことを振り返り、「選手は自分がやりたいことを理解してくれて、『協力するよ』と後押ししてくれた人も多かったです。スタジアムでは大豆バーガーを美味しく食べてくれたり、大豆に色々なメリットがあることを知らなかったと言ってくれる人が多くて、自分がやりたかったことをクラブのお陰でできて感謝しています」と頭を下げると、会場から大きな拍手が寄せられました。

Jリーグでサステナビリティ領域を担当する辻井隆行さん
【写真 米村優子】

2017年まで18年間プロ選手として活躍した石川さんは、FC東京のクラブコミュニケーターや日本サッカー協会不服申立委員に就任。
2019年、FC東京のイベントで採れたての農作物を使ってバーベキューをした際、野菜嫌いの子どもがパクパク食べている姿を見て、「育てるところから一緒にやったら、もっと美味しさを感じられて、色んなコミュニケーションを取れる」と農業の可能性に注目。
やがてコロナ禍となり、大学からJ1の選手までオンラインで連絡を取ったところ、サッカーが出来なくなり、自分の価値を示せずに不安で悩んでいる現状を知り、「だったら価値の変換をすればいい。農業で美味しいものをファンに届けるのも、サッカーと同じ価値になるんじゃないかと思ったんです」と一念発起。
「目の前のことに向き合う力、仲間と共同して作業する、コミュニケーションを取るというところで、農業とアスリートは親和性がある」と語る石川さんは、知人に紹介された長野県飯綱町の耕作放棄地を活用し、2021年からNAO’s FARMを始めたことを紹介していました。
そんな石川さんの話に多大な関心を示していた萩谷さんは、水戸市や常陸大宮市、東京都武蔵野市の学校給食オーガニック化を例に挙げ、「人の顔が分かるローカルフードは非常に大事」と強調していました。

水戸ホーリーホック・西村卓朗GM
【写真 米村優子】

次に辻井さんは、サッカーと大きく関係する気候変動に関してJリーグのアクションを披露。
Jリーグ公式YouTubeチャンネルで公開されている「サッカーができなくなる日!?全員に見てほしい、地球温暖化による異常気象と気候変動の現状、その対策の必要性。【ゲスト:中村憲剛/小野伸二/内田篤人】」は日本サッカー界のレジェンドらが専門家からサッカーを楽しめる環境を未来世代に引き継ぐための気候アクションを学ぶ注目の動画や、2030年までに達成すべき気候アクションロードマップを作成したことを会場全体に説明しました。

ヨーロッパでは2030年までに25%を有機農業に転換していく一方で、日本の有機栽培の面積はわずか0.6%。
西村GMは希少な有機農業に対する周囲の反応などについて尋ねられると、化学肥料が環境に与える影響をアカデミーの選手が直に学べることや、ファンサポーターと顔の見えるコミュニティができた現状を明かし、「サッカーだけをするのではなく、地域のプラットフォームとして、地域の様々な人や企業、行政を結びつけていくことが大事」と語ると、オフィシャルパートナーである萩谷さんは「私達は土地に種を蒔く『土の人』ですが、ホーリーホックや石川さんはその種を外から持って来てくれる『風の人』。農業はかなり厳しい状況でやり方や目線を変えなければいけない中で、違う仕事をしている『風の人』が関わってくれるのは非常に有り難いです」と頷いていました。

田島修太さん(茗溪学園中学校2年)
【写真 米村優子】

最後に水戸のGXプロジェクト挑戦について、辻井さんは「次世代に良い環境を引き渡すための一つの原動力になっていくよう、Jリーグも応援したいと思っています」とエール。

萩谷さんは「世界の共通課題はプラネタリー・バウンダリーといういわゆる地球の限界を知ることであり、もう一つはみんなが快適に過ごせるウェルビーイング。このような取り組みをしながら、サッカーをみんなで楽しく見続けられる世界を皆さんと一緒に取り組んでいきたいです」と言葉を綴ります。

「水戸の取り組みに負けていられない!」と奮起していた石川さんは「スポーツに関わる人達は、環境に対して加害者でもあり被害者でもあると聞きました。やはり練習や試合をすればゴミを出す加害者となり、気候変動による暑さで試合を見る人も選手もしんどいという被害を受ける。そういう意識を持つJリーグファンが増えたら、すごいエネルギーになる。カテゴリー関係なく、サッカーファミリー一丸となって取り組みましょう」と協力を呼びかけました。

元日本代表で現在はFC東京のコミュニティジェネレーターや長野県にある農園「NAO’s FARM」農場長の石川直宏さん
【写真 米村優子】

パネリストの専門知識や取り組みに刺激を受けたという田島さんは「今までクラブに頼って大豆バーガーの取り組みをしていましたが、自分の持っている知識や使って、色んなところに顔を出したり、もっとクラブに還元していけたらいいなと思います」と今後の意気込みを語りました。

そして西村GMは「我々は新しい常識に変わる社会の大転換期にいるのかもしれません。次世代のために何ができるのかという視点がすごく大事。共感してくれる皆さんやJリーグの皆さんとともに新しいチャレンジをしていきたいと思います」と決意を述べて、パネルディスカッションを締め括りました。

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