デイリーホーリーホック

「野々村芳和チェアマン記者会見全文『特徴あるクラブとして一定以上のスピードで十分成長している』」【HHレポート】※無料記事

【写真 米村優子】

5月13日、水戸市小吹町のケーズデンキスタジアム水戸で開催された栃木戦に、野々村芳和チェアマンが来場しました。水戸ホーリーホックやJリーグに関する記者会見が開催され、そのコメント全文を紹介します

Q.水戸ホーリーホックの変化や成長をどのように見ていますか?
「選手の時に対戦したこともあるので、今の感覚とすごくグラデーションがありますが、水戸ホーリーホックは難しい時期も結構あったじゃないですか?色んな方に支えて貰い、クラブも頑張りながら今がある。クラブと地域の人たちのサポートの賜物だと思います。その中で近年、特徴のあるクラブとして見られてきている。他の地域のクラブも成長しているのですが、ホーリーホックも一定以上のスピードで十分成長しているのではないかと思っております」

Q.特徴のあるクラブとは?
「例えば、フットボール目線から言うと、水戸は若い選手を育て、次のステップへというようなことが上手く出来ていると見ています。ここ近年はそのような選手が多い。Jリーグが出来た当初、全てのチームが一番を目指して始まりました。今は60クラブになる中で、将来的には当然、上を目指したいけれども、中期で考えたときに自分たちはどういう位置づけのクラブになるのが相応しいか。そんな考え方を他のクラブに比べて明確に出したのが早かったという風に見えます」

Q.特にどんな部分で一定以上の速度で成長していますか?
「水戸はまだ目立っていない、市場に出ていない若い選手をチームに入れて価値を上げ、ワンランク上のカテゴリーに輩出していく循環が出来ていると思うんですよね。それでいながら、毎年J2の中で10位前後ぐらいキープできている。これはフットボール面でかなり上手くやれているのだと思います。伸びた選手が抜かれて、戦力が落ちるのが通常多いのですが、そうじゃないというところは他のクラブよりも上手くやれてると感じています」

Q.そういった部分は、他チームから羨ましく思われているのでしょうか?
「羨ましいというか、上手くやっている印象です。水戸に限らず、クラブの売上や興行収入は、いくつか大きな柱がある訳ですけれど、その柱の一つを移籍金収入の部分でしっかりと立てられるようになっていかないと、なかなか世界の競争に追いついていけない。水戸は選手をしっかり取って育てて輩出することはできている。それをしっかりと売り上げにしていくことが、次の段階で必要になると思います。しかし、サッカーを作り上げたり、有望な選手を取って価値を高くしていくことは、そんなに簡単ではない。羨ましいというところとは少々違いますけど、その辺りは上手くいけそうなクラブだと思います」

Q.今回ケーズデンキスタジアムに来場した目的は?
「それぞれの地域に行って、いろんなこうやってメディアの皆さんと、今はQ&Aみたいな形ですけれども、何かもっとこうした方がいいんじゃないか、ああした方がいいんじゃないかという話ができるタイミングがあれば聞きたい。クラブの人もそうですし、場合によっては、サポーターの声も拾えるかもしれない。色んな地域に行って、行った方がわかることも多かったりするじゃないですか。その一環で今、各クラブを回っています」

Q.ケーズデンキスタジアムの雰囲気や印象は?
「自分が選手、コンサドーレ札幌の社長で来た時、そこまで見ていなかったので、今日しっかり感じたいなと思います。最近は雨が多いですよね?小島社長が言っていましたけれど、今季は8試合やって雨は6回目だとか。もっと良い空気感、熱量を作れると思いますし、どうやったらそれができるかっていうことを、クラブも地域と一緒に考えていくことは、多分この先もずっとやり続けていくと思います。決して悪い雰囲気ではないですし、今のスタジアムで今のホーリーホックで、十分もっといいものは作れると思います。10年後、20年後を考えた時に、どんな作品を地域の人と作りたいか。地域と一緒に考えることが大切なのではないかなと思います」

Q.今日で水戸ホーリーホックはJ2通算1000試合を迎えました。
「1000試合ってすごいですよね。その間にクラブ数も増えて、J3も出来て、さっき言ったように難しい状況に陥りながらも、フットボール面でJ2に居続けているっていうことはすごいこと。当然、多くの人が上に上にと言いますが、言うほど簡単な世界ではないのは身を以て知っています。大変な状況の中でも、1000試合をJ2で迎えたというのは、これは色んな人の貢献と努力があって、その賜物だと思います」

Q.1000試合目で来場したのは偶然なのですか?
「さっき知ったんですよね。ただスケジュール組んでくれる秘書が知っていた可能性はゼロではないのですけども」

Q.成績面と興業面で今後の水戸に期待することは?
「まず、水戸ホーリーホックがこの地域でどんなクラブになりたいかということが一つですね。そのビジョン次第でどのぐらいのサイズのクラブになることができるか。地域地域で色んな考え方があると思うんです。人口、インフラの部分だったり、あとは気候とか色々ありますよね。まずそこを一つクラブとしてのビジョンを出した上で、それでJ1を目指すとなれば準備していかなきゃいけないものがたくさんあるはずです。それはハード面だったり、それこそ売り上げをどのぐらい上げるか。上げるだけならば、ワンタイム、ワンチャンスはこの世界にはあるのかもしれない。しかし継続するとなると、より高いレベルで多くのものを準備しないといけません。でも着実に伸びてはいて、売り上げも数年前より1.5倍近くになっていると思います。他の地域も他のクラブも、その地域の特徴を生かして伸びている。そこで競争をしなくても、我々これでやるということを宣言しても別におかしくない。クラブのビジョン次第だと思います」

Q.チェアマンが札幌の社長時代に培ったもので、水戸に還元できるものはありますか?
「札幌という地域性と水戸は全くと言っていいほど違うところが多いと思います。だから同じようには多分いかないとは思いますが、ただどのクラブもその地域の人たちにとって、クラブはどんな存在なのか、それを繋ぎ合わせることで、サッカー好き以外のところでどれだけ仲間を作るかが大事。サッカーが強いか弱いか以外のところで、ホーリーホックには価値があるんだっていうことを、どんな取り組みをして、伝えていくかみたいなことが大事なんじゃないかと思っています。もちろん水戸もそれを取り組んでいると思います。そんな仲間が増える循環ができると、もっと熱量があるいいものができるのかなと思います」

Q.水戸は新スタジアムの構想がありますが、実現するにはどんなことが必要ですか?またJリーグとしてどうサポートしていきたいですか?
「リーグでは色んなノウハウや他のクラブの経験を含めた知見があるので、そこは当然ながら全面的にサポートできると思います。さっきの話と少し被るかもしれないですが、水戸ホーリーホックがスタジアムを持つということはどんな意味があるのかを明確にしていくことで、その必要性が多くの人に伝わると思うんですね。クラブにとって必要なものという意味合いではなくて、やはり地域にとってどういう場面でどれだけ必要なものなのか。スタジアムができることで、どんな地域課題を解決する一助となるのか。やはり多くの人とそれらを分かち合いながら進めていくべきです。サッカー面だけ見れば、当然サッカー専用のその地域に合ったサイズのスタジアムがあるっていうのは、フットボールのレベルを上げるとか、お客様の観戦環境を良くするなどプラスしかない。しかし、それ以上に地域の人にとってメリットがあるものにならなくてはならない。それは色んな地域で実例があり、証明されているので、この地域の人達とそれを一緒に考えることが大事なのかなと思います」

Q.水戸が新スタジアム建設する際の課題はどういった所になると思いますか?
「クラブの課題は僕自身、あまり理解できてないところもあると思うので、何とも言えません。クラブ目線で言えば、良いスペックの箱があったり、いい場所にスタジアムがあったら、多くのお客さんが来るチャンスが広がると考えるのは自然だと思うんですね。熱量のある多くのお客さんがいるスタジアムで試合を続けてできるとなると、そこでプレーする選手たちのレベルは必ず上がると思っています。フットボール目線で言うと、そういう箱があった方が間違いなく良いでしょう。ただそちらの目線だけでスタジアムができるっていうようなほど簡単なことでもない。それ以外の部分でクラブのいいところはたくさんあるはずなんですよね。地域とのコミュニケーション、地域課題をクラブ通して解決していくっていうようなことも含めて。そんなところでサッカーとその周りの人たちの、フットボール以外のところの輪みたいなものが出せると、スタジアムなり、新しい展開は見えてくる。サッカーの価値を分かって貰える人を増やすことで、仲間が増えて、地域のハード面も含めてインフラなどの課題は解決していくと信じて、Jクラブは皆やっていると思います。そんなスタンスで、ホーリーホックも行くといいのではないかとは思いますが、なかなか簡単ではないです。たくさん人を入れようと、昔は無料招待のチケットを配っていたこともあったかもしれないですが、今はデジタルマーケティングをどのクラブもできるようになってきました。Jリーグもサポートをしたりしながら、効果的に多くの人にどれだけアプローチできて、リピーターを増やすかを技術的にはできるようになって来ています。そんなところを上手く活用しながら、来て貰えるお客様が少しずつ増えていければいいと思います」

【写真 米村優子】

Q.コロナが大分落ち着いて状況が変わりつつありますが、集客が上手く出来ているクラブとそうでないクラブとの差はどう捉えていますか?
「数字的には恐らく、コロナ前の85%ぐらいになっていると思います。感覚的にですけど、若い人が増えている印象があり、それは結構な数のクラブが同じくそう言っています。コロナ以前の100%に戻るのは、時間の問題だと思います。どこのクラブが上手くいって、どこがそうではないということではないです。地域の人口や平均年齢などそれぞれ色があったりするので、もしかするとその辺の影響は地域で出ているのかもしれないですけども。そんなに心配するようなことはなく、とは言え楽観ばかりしている訳でもありません」

Q.水戸はドイツ・ハノーファーとの提携を発表しました。J2クラブが海外クラブとのパイプを持つことをどのように感じていますか?
「僕はすごくいいことだと思っています。提携をしてどんな取り組みするかは、すごく大事です。それは自分がクラブを経営していた時、色んなところと提携はしたけれども、なかなか動かなかったこともありましたから。Jリーグは国内でどう競争するかということを一生懸命にやってきた30年でした。海外との競争という意味では、選手のやり取りも世界のマーケットでどのぐらいやっていけるか、これから問われると思います。そういう意味では、一つの海外クラブをきっかけに、ドイツやヨーロッパを知るっていうことは、クラブにとっては絶対必要なことだと思います」

Q.Jリーガーの身体能力は、この30年でどのような所が伸びたのでしょうか?今後はどのような改善が必要でしょうか?
「日本人のプロサッカー選手としてのベースの身体能力という面では、きっと上がったんじゃないかと思います。一方で、それがヨーロッパや南米との比較で聞かれると、あまり明確に言えませんし、実際は上がっているのかもしれません。サッカー選手の能力は、かなり世界のトップの方に近づいたと思いますが、その一番の理由はメンタル、マインドの面の変化です。30年前は、『プロってどんなものなんだろうか?』と日本人の選手はほとんど正解がわからない中で始まっている訳ですよね。それはクラブ、現場の日本人の監督、コーチもみんなそうでした。手探りで続けてきて、その間にメディアの環境が変わって、インターネットでヨーロッパや南米など、世界のゲームが見られるようになった。世界にこんな選手がいると分かる状況になってきた。最初はブラジル代表がたくさんいても、この中でやるのが普通だと思っていましたので、そんな気後れすることはなかったですが、一旦リアルな世界を知ると焦りを感じる日本人が多かったと思います。でもその後、選手がヨーロッパに行ってプレーすることで、やっぱり日本人もできると感じた選手がかなり増えたと思います。今の選手は、世界のトップを意識しながらプレーしてる選手が圧倒的に増えていると思います。その部分は全く変わり、伸びた部分です。身体能力以上に、技術的な部分以上に、伸びた部分だと思います」

Q.Jリーグの将来像を教えて下さい。
「今でも十分価値を提供できている部分はあるということが前提にはありますが、メディア関係も含めて、多くの人にJリーグのいいところが伝えられているかというと、まだそうではないと思うんですね。だから、より多くの人に試合が面白い、面白くないみたいなこと以外の部分も含めて、Jクラブの価値を伝えることができると仲間が増えると思っています。仲間が2倍になったら、イメージとしては売り上げがそれに比例して伸びていく。いかにして、情報届けるか。そこはすごく大事だと思っています。一方でJリーグ創設から30年経って、10で始まったクラブが60になりました。僕が選手だった時代は、『プロとはなんぞや?』とよくわからない中でもがきながら進めてきたのが、ようやく分かり始めてきた。選手、指導者、クラブはプロとはこういうものだと分かり、安定はしてきました。ここからもっとストレッチしていくことを考えていかないといけない。今までは国内の目線が強かったですけれど、これからはプラスで海外を見られることができるクラブにならなくては。世界の中での自分たちのクラブ、世界の中でのJリーグっていうことを意識しながら活動していくっていうことが求められると思っています」

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