デイリーホーリーホック

曽根田穣選手インタビュー(前編)「水戸はサポーターの一喜一憂の表情がよく見えるクラブ。なので、勝って一緒に喜びたいという気持ちがより一層強くなった」【インタビュー】※無料記事

【写真 水戸ホーリーホック】

今季限りで水戸を去る決断をした選手たち。
ただ、誰もが水戸ホーリーホックのエンブレムに誇りを持ち、サポーターと喜びを分かち合うためにすべてを出し切った。
「移籍」という言葉の背後にある葛藤。そして、クラブとサポーターへの感謝の思い。
水戸ホーリーホックの一員として、最後にすべてを語ってもらった。

Q.水戸に移籍して過ごした今シーズンは、あらためてどんなシーズンでしたか?
「選手にとって、自分の価値観や『何のためにサッカーやるか』といったものが変わった1年でした」

Q.それはどう変わりましたか。
「3つぐらい理由があって、まず(本間)幸司さんと(金久保)順さんが、地元でプレーする姿を周りの人やお世話になった人達に見せていた光景をすごく格好良く感じたんです。あとは、若い選手が多い中、自分が今までやってもらっていたことを若い選手たちにやってあげようと思うようになりました。それと、本当に水戸はサポーターとの距離が近いから、サポーターの人たちの一喜一憂する表情がよく見えるんですよ。なので、勝ってサポーターと一緒に喜びたいという気持ちがより一層強くなりました」

Q水戸というクラブの風土がそう思わせたのでしょうか?
「僕はそうだと思ってます」

Q.水戸というクラブの印象というか、他のチームと違うと感じた部分はありますか?
「フロントスタッフの人たちと気さくに話せるし、GMとも話しやすい。ファミリー感があって、すごく居心地がよかったんです。ビッククラブじゃない水戸にしか出せないよさをすごく感じました。僕は次に愛媛に行きますけど、愛媛もそういうクラブにしていきたい。水戸をモデルにじゃないですけど、何か伝えることがあったら、伝えていきたいなと思います」

Q.ファミリー感というのは、アツマーレの環境が大きいのでしょうか?
「僕もそんなに多くのチームに所属したわけではないので、他のチームがどうかは分かりませんが、僕が在籍したクラブの中では一番フロントスタッフの仕事がよく見えたし、最後に挨拶に行った時には事務所でフロントスタッフのみなさんといろいろ話をすることができました。そういう感じはすごく良かったなと感じています」

Q.フロントスタッフの働いている姿を見て、感じるものがあると思いますし、それによって意識が変わったところもあったのでは?
「見ないより、絶対に見た方がいい。それを自分で見に行かなくても、見られる環境だったから、とても学びは多かったです」

Q.スポンサーさんとの距離も近いという話もよく聞きます。
「僕自身はそんなにパートナー企業への挨拶には行っていないんですけど、コロナ禍でそういう方達と顔を合わせる機会は減っていた中、今年は試合に観に来てくれている人たちに挨拶するような機会があって、パートナー企業や支援していただいている方との距離の近さを感じました」

Q.クラブを支えてくれる人たちの顔や思いを知ることが選手としての力となる?
「僕はそう思います」

Q.Make Value Projectなどピッチ外の活動を水戸は積極的に行っています。体験してみていかがでしたか?
「サッカー選手の多くはサッカー以外のことを知らない人間なんです。だから、サッカー以外の世界を知る機会として、すごくいい時間だと思うし、もっとこう長く水戸にいることができれば、自分にとってもっと有益なものになったと思います。いい取り組みだと思うし、いい活動と思います」

【写真 水戸ホーリーホック】

Q.今シーズンを振り返っていただきたいのですが、印象に残っているプレーや試合はありますか。
「ホームの甲府戦ですね。自分のゴールというよりは、これがサッカーの選手の醍醐味かなと感じる試合でした。若くて試合経験が少ない選手たちと、ターンオーバーで一緒に出て、最初からずっと押し込まれてて、相手のシュートが入らなかっただけで、一方的な試合展開の中、ポンポンと2点決めることができました。正直なところ、力の差は結構あったと思います。それでも、最後までみんなで耐え凌ぐことができた。今回のワールドカップで日本代表がやったような戦い方で、自分たちより力のあるチームに勝つことができた。ピッチの11人だけじゃなくて、スタッフとチーム全員とが一体になれば、内容が悪くても、試合で勝てるということを学んだ試合でした。もちろんずっとあのような試合をやれと言われても、意識してできるものではないと思いますし、雰囲気や流れもあるので、難しいですけど、そういう試合を水戸で経験できたことは本当によかったと思っています。一番思い出に残ってる試合です」

Q.甲府戦は曽根田選手がキャプテンマーク付けてましたね。
「付けてました。プロになってキャプテンマークを巻く試合はプロになってからなかったので、それも僕のサッカー人生にとって大事な試合になりました」

Q.若い選手に対してどんな声掛けをしましたか?
「とにかく死ぬ気で守れと。失点しなければ何とかなるからと。形とか理屈はいいから、とにかく守れば、自分たちの流れは来るからということを伝えていました。若い選手たちが素直に聞いてくれたし、本当に一つになれたから勝てたんだと思います。ああいう試合をもっとたくさんできれば良かったなと思います」

Q.今年の水戸は若いチームで、曽根田選手は年長の立場となりました。そういう立場でプレーして感じたこともあったのでは?
「遅かれ早かれサッカーを続けていれば、ベテランにはなるんですよ。なので、いずれはそういう経験はできたと思います。水戸で最初に経験することができた。そういう機会を与えてもらったクラブと秋葉監督に感謝しています」

Q.以前お話を聞いた際、声を張り上げて引っ張るというよりも、選手一人一人に思ったことを伝えていく方が自分には合っていると言っていましたが。
「けがもちょこちょこあって欠場する試合が少なくなかった。選手をやっている以上、試合に出られない時には悔しさはありますけど、それよりチームが勝つことや若い選手が活躍することを素直に喜べる自分がいたんです。それが選手としていいか悪いかは分かりませんが、今年はそういう気持ちでプレーできていたので、個人的にいい時間だと思っています。楽しかったです」

Q.その感情も変化ですね。
「変化です。ただ、今回の移籍は自分の中ではそういうのじゃなくて、もう一回初心に返って、自分に課題を課して、J2に上がる目標を達成するために戦いたい。チームが掲げてる目標を選手達の中にしっかり落とし込めるように、必死になってサッカーを頑張りたいと思っているところです」

※後編(有料記事)に続く

(取材・構成 佐藤拓也)

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