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「苦しみながらも勝ち切る強さを見せた水戸ユース。内田優晟選手は日本代表FW上田綺世選手が持つ得点記録を更新。リーグ最終戦、有終の美を飾る」【育成NOW】※無料記事

【写真 佐藤拓也】

12月4日、高円宮杯JFA U-18サッカーリーグ茨城 2022(IFAリーグ)1部最終節、水戸ユースAは明秀日立Aを3対0で下して、有終の美を飾りました。

ただ、スコアほど簡単な試合ではありませんでした。むしろ、苦しい試合展開だったと言えます。

【写真 佐藤拓也】

水戸ユースAは前節2位鹿島ユースBとの直接対決を制して、3年ぶりのリーグ戦制覇を決めていただけに今節に向けてのモチベーションは難しいものがありました。一方、明秀日立Aにとっては、3年生の引退試合ということもあり、相当強い気持ちを込めて挑んできました。その勢いの差が試合開始からピッチに表れました。

水戸ユースは最終ラインからビルドアップしながら攻撃を展開しようとするものの、明秀日立の激しいプレスを受けて、なかなかボールを前進させることができませんでした。エースの内田優晟選手は前線で孤立し、なかなかいい形でボールを受けることができず、劣勢を強いられました。

【写真 佐藤拓也】

ボールを奪ってからの素早い攻撃から何度もピンチを招きました。しかし、GK高松大智選手を中心に守備陣が奮闘。明秀日立の武器であるサイド攻撃に対しても、GK高松選手が思い切りのいい飛び出しでクロスに対応してゴールを許しませんでした。

【写真 佐藤拓也】

苦しい展開が続いた前半を無失点で終えると、水戸ユースは息を吹き返します。後半はテンポのいいパスワークで明秀日立のプレスをかいくぐり、両サイドから攻め立てていきました。

先制点が生まれたのは51分。田中吟侍選手(3年)が蹴った左CKに対して、内田選手と相手DFが競り合い、流れたボールを立花康生選手(3年)が押し込み、均衡を破りました。

【写真 佐藤拓也】

さらに60分には右サイドからのクロスに対して、ファーサイドに走り込んだ市村慎之介選手(3年)がヘディングシュート。一度は防がれるものの、こぼれたボールに素早く反応して蹴り込み、追加点を挙げました。

【写真 佐藤拓也】

前半の劣勢の流れから一転、自分たちの流れに持ち込み、2点のリードを奪った水戸ユース。その戦いぶりにチームとしての芯の強さを感じずにはいられませんでした。そして、期待がかかったのは内田選手の上田綺世選手が持つリーグ最多記録の更新です。現在1位タイの33点を決めており、あと1ゴールを決めれば、新たな記録を作ることができるのです。

【写真 佐藤拓也】

しかし、チャンスはあれども「プレッシャーを感じた」と振り返るように、ゴール前で力んでしまい、これまで見せてきた圧巻の決定力を出すことができませんでした。枠を外したり、GKに止められたりなどして、チャンスを逃し続けてしまいました。それでも、内田選手は下を向くことはありませんでした。それどころか、「どうせちゃんと点を取るし」という自信を持ってプレーし続けたのです。

【写真 佐藤拓也】

そして、“その時”は訪れました。83分、中盤の田中選手からゴール前にスルーパスが送られます。DF背後に走り込んだ内田選手は飛び出してくるGKの手前で左足を伸ばしてボールを触り、ゴールに流し込んだのです。16年に上田選手が記録を築いた時、「破られることはないだろう」と言われていた記録を破ってみせたのです。

【写真 佐藤拓也】

しかも、全試合ゴールという偉業も成し遂げました。シーズン通して、調子の良い時も悪い時もゴールという結果を残し続けることは簡単なことではありません。これはすごい記録だと思います。さらに、記録更新へのプレッシャーがかかる中でしっかりと結果を出したメンタルの強さも特筆すべきものがあります。ストライカーには必要な資質であり、そのメンタルはプロの世界でも内田選手の武器となることでしょう。

【写真 佐藤拓也】

苦しい試合をしっかり勝ち切り、そして、内田選手の記録更新という最高の形でシーズンを終えることができました。しかし、ここがゴールではありません。何度も記してきたように、あくまで一番の目標はプリンスリーグ昇格です。12月17日から行われる参入戦に向けて、気持ちを切り替え、心身共に最高の準備を行って、悲願を達成してもらいたいと思います。

【写真 佐藤拓也】

コメント

【写真 佐藤拓也】


〇樹森大介監督
Q.最終戦で勝利しました。相手も3年生にとっての公式戦最終戦ということで、相当気合いを入れて挑んできている様子でした。苦しい展開を余儀なくされた前半を無失点で抑えたことが大きかったように思うのですが。
「明秀日立さんの3年生にとって引退試合のような一戦だったので、非常にモチベーションが高かった。多少受けに回ってしまったところがあり、入りが悪かった印象がありました。でも、そこをうまくしのげてよかったと思っています」

Q.前節優勝を決めていただけにメンタル的に難しい試合だったと思います。試合内容的には相手の勢いに押される『負けパターン』かなと思っていたのですが、その展開で勝ち切ったところにチームの成長を感じました。
「僕自身も『ヤバいな』と思って見ていました。ただ、しょうがないところはありますよね。どこまで認めてあげるか。人間なので、どうしても緩んでしまうところはあると思うので。ただ、僕らの目的は2週間後なんです。そこに対する発破をハーフタイムにかけました。それで後半は気持ちを見せて戦ってくれて、よかったと思います。難しい試合でした」

Q.今日は3年生のみが出場していました。
「2年生が修学旅行で、あまりコンディションがよくなかったので、前日のBチームの試合に出場させて、今日は3年生と修学旅行に行っていない2年生だけで戦いました」

Q.内田選手が上田綺世選手の記録を破るゴールを決めました。
「1年生の時からコンスタントに試合に出て、3年生の頭でグッと伸びました。あとはチームメイトに非常に恵まれたところもあると思います。中盤もサイドアタッカーも強烈な選手が揃っているので、彼らのアシストがなければ、点は取れません。もちろん、彼自身の決定力がこの記録を作った大きな要因ではありますが、周りの仲間に感謝してもらいたいと思っています」

Q.リーグ戦全試合得点です。
「絶対に1試合に1点は取っているし、7試合でハットトリックを記録している。そういう意味で成長したし、頼もしくなったなと。3年生になって意識が変わったところもありました。責任感やコンディション作りをより意識するようになったと思います。そして、このプレッシャーの中でしっかり決めきるところがすごいですね。残り数試合のところで、結構プレッシャーがあったのに、決めきってくれた。そこに成長を感じました」

Q.監督から見てストライカーとしての内田選手の魅力は?
「『これが武器』というものがないんですよね。マルチになんでもできてしまう。ゴールのバリエーションが豊かで、どういう形でも点を取れる。左右で蹴れるし、ヘディングも強い市、こぼれ球の予測もいいし、ドリブルシュートも得意。いろいろなバリエーションがあるのが強みだと思っています。とはいえ、プロでは武器を作らないといけないと思うので、プラスアルファで自分の形が作れるようになるといいかなと思っています。ゴール感覚に関しては、非常に長けているものがあると思っています」

Q.いろんなゴールを見せてくれましたね。
「本当にそうです。クロスの入り方もうまいし、こぼれ球もうまいし、セットプレーも蹴れる。いろんな形を持っています。個でも打開できるタイプでもあるので」

Q.相手に厳しくマークされても得点できるところもすごいですよね。
「どのチームも『10番は抑えろ』という声をよく聞きますし、厳しいマークに遭いながらもリーグ後半戦でゴールを量産できたのはいろんな形があるからだと思うんですよね。そこはすごい成長を感じます」

Q.トップでの活躍に期待ですね。
「ユースは通過点なので、これからさらにプレッシャーがかかる中でどれだけ活躍できるか。ここから一回りも二回りも成長しないと、トップでは通用しないと思うので、壁を乗り越えてもらいたいと思います」

Q.参入戦での活躍にも期待がかかります。
「参入戦という場でさらに成長できればと思っています。関東の試合で川崎U-18や千葉U-18相手に点を取れず、悔しい思いを彼はしています。だからこそ、ここで結果を残したいという気持ちを持っていると思うので、結果を残してくれることに期待しています」

【写真 佐藤拓也】


〇高松大智選手
Q.リーグ戦全試合が終了しました。これまでの戦いを振り返ってください。
「前期は自分自身失点が多くて、後期初戦でポジションを奪われてしまったんです。次の試合からコンスタントに試合に出ることができたんですけど、そこからは失点を減らすことができました。チームとしてもいい雰囲気になっていって、優勝できたと思います」

Q.攻撃的なチームの中で守備陣の踏ん張りが目立ちました。今日はまさにそういう試合でしたね。
「失点してしまうと、流れを持っていかれてしまうので、守備陣全員で守ることによって、攻撃の勢いを出そうと意識していました」

Q.ハイボールの処理が完璧でしたし、思い切りのいい飛び出しなどで再三ピンチを防ぎました。
「相手が対人プレーやクロス攻撃を得意としているチームだったので、自分が積極的に出て処理することを意識していました。それがうまくいきました」

Q.メンタル的に難しい試合だったと思います。前半は苦しい展開が続きましたが、どういうことを意識していましたか?
「難しい試合でした。自分がゴールを守ることで流れを引き寄せようと思っていました。ワールドカップでの日本代表も最少失点に抑えて、後半自分たちの流れに持ち込むことができている。なので、自分たちも粘り強く守備をしながら、流れが来た時にゴールを決めたいと思っていました」

Q.内田選手が得点記録を更新しました。GKから見て、内田選手の強みはどこだと思いますか?
「点を取ることですね。ただ、それだけではなく、アバウトなクリアボールも前でおさめて起点になってくれる。そういう点でも頼りになる存在です」

Q.あれだけゴールを決められる要因はなんだと思いますか?
「常にゴールを意識してプレーしていることだと思います。そういう選手はGKとして嫌ですから。優晟自身もいいプレーをしてくれていますが、周りの選手がいいプレーをしているからこその結果だと思っています。みんなに感謝したいです」

Q.大事なのはここからですね。参入戦に向けての意気込みをお願いします。
「リーグ戦で優勝することはシーズン前から大前提だと思っていました。ようやくスタートラインになったと思っていますし、ここからが本番だと思っています。自分は失点しないようにプレーして、チーム一丸となってプリンス参入をつかみたいと思います」

【写真 佐藤拓也】

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