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「水戸ユース、2位鹿島ユースBとの直接対決を制して、3年ぶりにIFAリーグを制覇。いざ、プリンスリーグ参入戦へ」【HHレポート】※無料記事

【写真 佐藤拓也】

11月26日、水戸ユースはひたちなか市スポーツ広場Bで高円宮杯IFA U-18リーグ1部第17節鹿島ユースB戦に挑みました。

残り2試合という状況で迎えた2位との直接対決。引き分け以上という結果を出せば、優勝が決まる大一番となりました。ここまでわずか1敗で首位を走ってきましたが、チームに慢心はありませんでした。それも昨季首位を走りながらも最終戦で敗戦を喫して、優勝を逃してしまった苦い経験があるからです。「同じことを繰り返さない」(樹森大介監督)と気を引き締めて今節に臨みました。

【写真 佐藤拓也】

いきなりスコアは動きました。序盤からアグレッシブな姿勢を見せる水戸ユースが攻め込み、5分に左サイドから切り込んだ吉井拓真選手(2年)が豪快にシュートを蹴り込んで先制に成功します。
その後も果敢にハイプレスをかけてボールを奪取する水戸ユースの勢いが鹿島ユースBを圧倒。再三ゴールに襲い掛かりました。しかし、決定力を欠いて追加点を奪うことができない時間が続きました。

【写真 佐藤拓也】

すると、一瞬の隙を見せてしまいます。31分、ハイプレスをかいくぐられて、ボランチの背後を疲れ、そのままバイタルエリアにボールを運ばれてミドルシュートを決められてしまったのです。ロングボール主体の鹿島ユースBに対して、「セカンドボールの争いのところで分が悪くなっていた」と樹森監督が言うように、ハイプレスをかけようとするMFとロングボールに対応するDFとの間にできたスペースを埋めきることができなかったことが原因。ロングキックの質の高い相手に対しての課題を露呈した失点となりました。

【写真 佐藤拓也】

ただ、「失点した後に落ち着いて自分たちのサッカーができた」(内田優晟選手)ところにチームとしての成長を感じさせました。動揺することなく、それまで通りアグレッシブな姿勢を貫いて、再び攻勢に出ました。そして37分にペナルティエリア左に侵入した内田選手からの折り返しを立花康生選手(3年)が合わせて、勝ち越しに成功します。

【写真 佐藤拓也】

後半に入っても水戸ユースの攻勢が続きました。両サイドから果敢に攻め立て、決定機を作り出します。そして、エースが大仕事を果たします。68分、自陣からのロングボールが鹿島ユースBの最終ラインの裏に送られます。そこに走り込んだのが内田選手でした。

【写真 佐藤拓也】

実は、前期の対戦でも同じ形でチャンスがあったのです。しかし、その時はGKにキャッチされて決めることはできませんでした。それでも高いDFラインを維持する相手に「今節も同じ形ができるはず」と予想していたとのこと。そのため、その日の朝に前期の対戦のその場面の映像を見返して、イメージを作っていたそうです。そして迎えたチャンス。今回はGKの手前で足を出して放ったシュートはGKの上をすり抜けて、ゴールに吸い込まれていきました。ストライカーとしての勘と最高の準備が実ったゴール。優勝に大きく近づくこととなりました。

【写真 佐藤拓也】

終盤に1点を返されるものの、その後は鹿島ユースBの反撃を跳ね返して、勝利の瞬間を迎えることができました。昨季と同じことを繰り返すことなく、2位のチームをしっかり叩いて優勝を手にすることができました。

【写真 佐藤拓也】

ただ、この優勝はあくまで通過点に過ぎません。真の目標は12月に行われるプリンスリーグ入れ替え戦で勝ち抜いて、プリンスリーグに昇格すること。本当の戦いは、これからなのです。今節勝利することはできましたが、前述の通り、ロングボールやパワープレーの対応といった参入戦に向けての明確な課題が出たこともこの試合の収穫と言えるでしょう。さらにチーム力を高めて、13年以来のプリンスリーグ昇格を成し遂げてもらいたいと思います。

【写真 佐藤拓也】

コメント
〇内田優晟選手(3年)

Q.今の気持ちをお願いします。
「2年間優勝を逃していたので、優勝できてまずはホッとしています。得点ランキングのところは、今日2点取って記録更新したかったんですけど、33点で上田綺世選手と並んだので、ラスト1節あるので、点を取って、誰も追いつけない記録を作りたいと思います」

Q.優勝が決まる一戦でした。どんな気持ちで臨みましたか?
「前期負けている相手だったので、ここでしっかり勝って、そのまま優勝することを意識しました。昨年は勝てば優勝という試合で負けて優勝を逃しました。その悔しさをを力に変えて、しっかり戦えたのかなと思っています」

Q.狙い通りの戦いはできた?
「前半の入りから自分たちのアグレッシブなハイプレスをベースとしたサッカーができて、そこでしっかり点を取れたので、そこはよかったと思っています。その後、失点しまったものの、落ち着いて自分たちのサッカーができた。後半切り替えて、しっかりゴールを取れたので、よかったですね」

Q.ゴールシーンを振り返ってください。
「前期戦った時に同じ形があって、今回もそこは狙えると思っていました。あの場面でやっと来てくれました。その時、前期のことを一瞬思い出してしまったんですけど、落ち着いてループシュートを決めることができました」

Q.前期は決めることができなかった?
「決めることができず、GKにキャッチされちゃいました。その映像を今日の試合前に見てきたんです。それが活きました」

Q.そのゴールが決勝点となりました。
「最後は自分が決めて、勝たせないといけないと思っていたので、うれしいです」

Q.プリンスリーグ昇格がかかった入れ替え戦に挑みます。
「今年のチームは選手が揃っているので、優勝して当たり前という気持ちでスタートを切りました。この優勝は通過点と考えて、参入戦をしっかり勝って、来年の選手たちをプリンスリーグに連れていきたいと思います」

〇菅野波琉キャプテン(3年)
Q.今の気持ちをお願いします。
「個人的には今季あまり試合に出られなかった悔しさはあるんですけど、チームとして優勝できたことはすごくうれしいです」

Q.優勝の要因は?
「昨年の悔しさが今年も強く残っていたことが大きかったと思います」

Q.今日はどんな気持ちで試合に臨みましたか?
「チームにはすごく緊張感がありました。ただ、失点してはいけないということを考えすぎると、硬くなりすぎてしまうし、それで失点するとガクッと落ちてしまうと苦しくなるので、気の引き締め方が重要だったと思っています」

Q.今日の勝因は?
「チームとしてアップからすごくいい雰囲気を作れていた。負ける雰囲気はありませんでした。ただ、サッカーなので何が起こるか分からない中、DFラインが中心となって、しっかり守れたことが勝利につながったと思っています」

Q.サポーターもたくさん来ていましたね。
「めちゃくちゃ嬉しかったですし、力になりました」

Q.プリンスリーグ昇格に向けて、ここからが大事になりますね。
「参入戦で勝って、プリンスリーグ昇格することが一番の目標。そこに向けて、チームとしてしっかり挑みたいと思います」

〇樹森大介監督
Q.今の気持ちを聞かせてください。
「率直にうれしいです。でも、優勝しなくちゃいけないと思っていましたし、プリンスリーグ昇格まで頭に入れてここまでやってきました。まず一つ結果を出せたことによって、次はプリンス昇格に向けて準備しようと頭の中を切り替えているところです」

Q.今日の試合は狙い通り進んだのでしょうか?
「失点が余計でしたね。あとは決定機がたくさんあっただけに、そこを決めきらないといけなかった。これだけ決定機を外したら普通は負けるんですけど、それでも勝てたことはよかった。粘り強く戦ってくれました。今年はいい形で攻撃できているので、その流れが出た試合だったと思います」

Q.鹿島Bが大きなボールを使うサッカーを展開してきました。
「そこは想定内だったのですが、今日はボランチのバランスが悪かった。今まではいいプレスからいい守備という形が多かったんですけど、ロングボールでひっくり返されることが多かった。そこのセカンドボールの争いのところで分が悪くなっていた。ハーフタイムに修正をかけたんですけど、後半になってもそこのよさをあまり出せなかった。そこは課題だったと感じています。ボランチがプレスの意識が強くなってしまい、前につり出されてしまうことが多かった。プレスバックも遅くて、プレスをかけることが目的となってしまい、ロングボールの対応が鈍かったなという感じです」

Q.1失点目はまさにボランチの背後を取られての失点でした。
「そうなんです。DFのラインがきれいに裏を取られることはないだろうと思っていて、バイタルからのミドルシュートに警戒するように試合前に伝えていました。鹿島さんはパンチのあるシュートを持っている選手がいるので、そこが一番怖いと思っていたんですけど、その通りの流れから失点してしまいました。あそこは課題です。県リーグの他の相手だとあそこで寄せなくてもミスをしてくれるんですよ。でも、鹿島さんのような個の能力が高いチームは寄せきらないと決めきられてしまう。プリンス参入戦に出てくるチームは個の能力が高いと思うので、そこはもっと意識しないといけないと感じました」

Q.プリンス参入戦に向けて課題が見えた試合でもあったということですね。
「攻撃においては積み上げてきたものにある程度自信を持つことができているのですが、守備のところで水戸はフィジカルが強いわけではないので、パワープレーや放り込まれた時に難しくなる局面が出てくる。そこの課題は出ましたね。実際、終盤はクローズするためにシステムを変えたのに、失点してしまった。そういうところをもう一度チームとして見直さないといけないと感じました」

Q.昨年は悔しい思いをしました。その経験も活きたのでは?
「本当に昨年の最終節の敗戦はトラウマじゃないですけど、あの悔しさは残っています。昨年の3年生にとても悲しい顔をさせてしまった。また同じことを繰り返したくないという思いがあったので、一つクリアできたことはよかったと思っています。ただ、今季開幕前は全勝優勝するという目標を立てていたんですよ。それぐらい選手たちに発破をかけましたし、僕も自分にプレッシャーをかけて臨みました。この優勝は通過点で、あくまでこれからが本番だと思っています。プリンスリーグに昇格することがクラブのためにもなりますし、茨城の高校サッカーのためにもなると思っています。茨城のチームがどんどん上に行く環境づくりをしていきたいと思っています」

【写真 佐藤拓也】

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