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「勝利だけを目指して戦った水戸ユース、捨て身の猛攻実らず。終了間際にカウンターから2失点。プリンス参入を逃す」【育成NOW】※無料記事

【写真 佐藤拓也】

12月11日、水戸ユースはプリンスリーグ関東参入をかけた大一番に挑みました。高円宮杯JFA U-18サッカーリーグ茨城 2021(IFAリーグ)1部最終節、1位の水戸ユースは2位の鹿島学園Aと対戦。水戸ユースが勝ち点24、鹿島学園Aは23、そして、他会場で試合を行う3位の明秀日立も23という状況で今節を迎えたのでした。

【写真 佐藤拓也】

現在、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ関東は1部リーグ制で行われていますが、来季は2013年度以来の2部リーグ制になることが決定しており、今季県リーグで優勝したチームは参入戦を行うことなく、プリンスリーグ関東に参入できるレギュレーションとなっています。だからこそ、今季は参入の大きなチャンス。8シーズンぶりの参入を目指して、士気高く今節を迎えました。

【写真 佐藤拓也】

試合開始から水戸ユースが勢いよく攻め込む展開を作りました。5分に右サイドを突破して入れたクロスをヘディングシュート。GKがこぼしたところを狙いますが、わずかに届かず。その後も水戸ユースは右サイドを中心に攻め立てていきました。

【写真 佐藤拓也】

前半飲水タイムを明けてからさらに攻勢を強めて、立て続けに決定的なチャンスを作りました。27分に鹿島学園GKのパスミスを奪った内田優晟選手がシュートを放ち、34分にはCKのこぼれ球を長谷川楓選手がボレーシュート、さらに41分には激しいプレスでボールを奪った上野山叶夢選手からの折り返しを内田選手が合わせます。しかし、3本のシュートとも相手GKの好セーブに阻まれてゴールを決めることができませんでした。終始ペースを握っていただけに「前半のうちに先制できていれば…」と樹森大介監督は唇を噛み締めました。

【写真 佐藤拓也】

後半に入ると、鹿島学園がプレスの威力を強めて勢いを出してきました。序盤は押し込まれる時間が続きました。それでも、集中を切らすことなく対応してゴール前への侵入を防ぎました。水戸ユースも安定を取り戻していき、50分以降は両チームの勝利の執念がぶつかり合う一進一退の攻防を繰り広げられました。

【写真 佐藤拓也】

その中でベンチに他会場から情報が入りました。
「明秀日立が4点リードしている」
このまま0対0で終わったとしても、明秀日立に抜かれて2位になってしまいます。勝利をするために74分、81分、87分と攻撃的な選手を次々と投入。その都度、攻撃的なシステムに変えていきました。
リスクをかけたことにより、ピンチも増えて86分には右サイドから崩されて決定的なピンチを招きます。しかし、チーム全員で体を張ってゴールを死守。そこから反撃に出ていきました。90+1分、左サイドからのクロスでチャンスを作ります。GKがこぼしたボールを狙おうとしましたが、ゴールを決めることはできませんでした。

【写真 佐藤拓也】

しかし、その直後のことでした。鹿島学園はすぐに攻撃を開始。前がかりになって手薄になっていた水戸の右サイドへカウンターアタックを仕掛けました。同サイドの選手がスピードに乗ったドリブルで駆け上がり、水戸の選手も必死に追いますが、捕まえることができませんでした。そして上げられたクロスをニアで合わせられて失点してしまったのです。倒れ込む水戸ユースの選手たち。しかし、ベンチから「まだ終わってないぞ!」という声が飛び、選手たちは立ち上がり、ゴールを狙おうとします。

【写真 佐藤拓也】

さらに攻撃に人数を割く捨て身のアタックを見せたところ、再び悲劇が訪れます。鹿島ゴール前まで押し込みながら攻め切れず。再び前がかりになった裏のスペースを突かれて失点をしてしまったのです。ボールがネットを揺らした直後、試合終了の笛が鳴り響きました。

【写真 佐藤拓也】

泣き崩れる選手たち。悔し涙が止まりませんでした。それだけこの一戦にかけていたことが痛いほど伝わってきました。簡単に気持ちを切り替えることはできないでしょう。でも、この悔しさを糧に、それぞれがこれからの力に変えてもらいたいと思います。そして、下級生たちが3年生の思いを背負って、来季こそプリンスリーグ昇格を成し遂げてもらいたいと思います。

【写真 佐藤拓也】

そして、この一戦に向けて今まで味わったことのないようなプレッシャーを感じながら準備をしてきた経験も今後に活かさなければなりません。対する鹿島学園は1週間前に全国高校サッカー選手権大会茨城県大会決勝戦を戦っていましたし、過去に何度も“大一番”を経験しています。そうした経験値の差もあったように感じました。こればかりは積み上げていくしかありません。

ただ、そうした舞台を作ったのは選手たち自身です。悔しい思いはしましたが、この日を首位として迎え、最後まで勝利を目指して戦い抜いたことを誇りに思ってもらいたいと思います。

【写真 佐藤拓也】

コメント
樹森大介監督

Q.試合を振り返ってください。
「選手たちは一生懸命戦ってくれました。前半のチャンスを決めきってくれていればという思いはもちろんありますが、それもサッカーです。最後、オープンな展開になってしまいました。3位の明秀日立さんが勝っている情報は入っていたので、僕らは(優勝するためには)勝つしかなかったので、バランスを崩してでも点を取りに行くしかなかった。それがいい方向には出なかった。でも、選手はすごくよくやってくれました。だからこそ、悔しいです」

Q.鹿島学園の守備は堅かったですね。
「枚数的には同数にして、優位性を保てるかなとか、センターバックがフィジカル的に強いので、マッチアップでは難しいので、前線の枚数を増やしたのですが、崩すことができませんでしたね。もちろん、守備のリスクを理解した上での戦い方だったので、しょうがないですね」

Q.プレッシャーがかかる中でこの試合に向けて準備した経験は今後に生きるのでは?
「本当にいい経験になったと思います。プレッシャーのかかる雰囲気をクラブが作ってくれました。ただ、僕らとしては、公式戦の日程が空きすぎたところはありました。1カ月ぶりの公式戦でしたから。なので、いい準備ができたかというと、そうじゃなかったのかもしれませんね。鹿島学園さんは選手権の予選で毎週緊張感のある試合を戦っていたので、そこに差はあったように感じますが、それでもこの試合に向けていい雰囲気で取り組んでくれていたと思います」

Q.この経験を今後に活かしてもらいたいですね。
「勝敗は大きなことですけど、この経験を糧に、3年生は次のステージで活かしてもらいたいですし、1、2年生は来年プレーで表現してもらいたいですね。勝った負けたで一喜一憂する試合はあまりないので、僕らスタッフも今後に活かしていかないといけないと感じています」

〇長谷川楓ゲームキャプテン
Q.悔しい結果に終わってしまいました。
「自分たちのやるべきことをやりました。でも、サッカーは勝つためには運も必要なスポーツ。この結果を真摯に受け止めて、今後につなげたいと思っています。僕ら3年生は来年はありませんが、大学に入ってから、今後のサッカー人生に活かしたいと思っています」

Q.鹿島学園は守備が堅いチームです。どういうイメージを持って試合に入りましたか?
「ゴールを決めるというより、シュートを多く打つというイメージを持って入りました。また、相手が前がかりになった時に裏のスペースを突いてゴールを決めきることをイメージしていました」

Q.守備を崩しきれなかったように感じましたが。
「いや、自分たちの長所であるボールを奪ってからの攻撃に関して、前半は特にいい形で出せていました。最後は自分たちが点を取りに行くと前がかりになった隙を突かれて、残念な結果になってしまいました」

Q.この試合に向けてプレッシャーがかかる中で準備をしたことは大きな経験ですね。
「前回の公式戦から1カ月空いていたんです。それが悪いことだとは思っていなかったのですが、やはり緊張感のある試合を経験しないと自分たちは成長しない。サッカーは勝ちと負けがはっきり出るスポーツなので、真摯に受け止めたいと思います」

Q.あらためてどんなチームでしたか?
「リーグ前半戦はあまり3年生が試合に出られていなかったんです。でも、監督からは『3年生が主体にならないと勝てない』と言われていました。後期になってから3年生が主体となって勝ったり、勢いづけることができるようになったので、よかったと思います」

Q.今後に向けて、どのような思いを持っていますか?
「この試合も無駄ではなかったと思っています。勝てればよかったのですが、負けた事実もしっかり受け止めて、今後の自分たちのサッカー人生に活かしていきたいと思っています」

Q.下級生にメッセージはありますか?
「こういう結果になって申し訳なく思っています。ここに来られていない2年生もいますが、僕らの気持ちも背負って、来年はプリンスに昇格してもらいたいと思います」

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