デイリーホーリーホック

開設7周年記念 記憶に残る記事を再掲⑤【レビュー】J2第41節コンサドーレ札幌戦 「劇的逆転勝利! 水戸を支えるすべての人の力でつかんだJ2残留!」(1488文字)(2015/11/15)

残留争いに巻き込まれた2015年。
監督交代という事態が起きるなど苦しい戦いが続いた中、なんとかこの試合でJ2残留を決めることができました。
個人的には今までの水戸の試合で一番印象に残っている試合です。
三島康平選手のゴールが決まる瞬間は、今でもスローモーションで脳裏に焼き付いています。

佐藤拓也

【写真 水戸ホーリーホック】

【写真 水戸ホーリーホック】

今シーズンの水戸の戦いを凝縮したような90分

ついに長く続いた苦しい戦いに終止符を打つ時が訪れた。試合終了の笛が鳴り響いた瞬間、西ヶ谷隆之監督は静かに両手を天に突き上げた。ホームのサポーターの前で、勝って、自力で決めたJ2残留。今後水戸の歴史において長く語り継がれるであろう劇的な逆転勝利だ。戦ったのは選手たちだけではない。水戸を支えるすべての人の力でつかんだ勝利と言えよう。歓喜に包まれたスタジアムは、このクラブの大きな可能性を示していた。

今シーズンの水戸の戦いを凝縮したような90分であった。前半の水戸はリーグ序盤戦の姿を思い出させた。札幌の強烈なプレスを受けて、自陣でミスを連発。立て直すことができないまま押し込まれる展開を強いられた。そして24分にペナルティエリア内で不用意なハンドを犯して献上したPKで先制点を許した。

ここで崩れてしまうのが以前の水戸であったが、そこからチームの精神的な成長を見ることができた。「焦れなければ大丈夫だと思っていた」と内田航平が言えば、「札幌がこのペースを続けられないと思っていた」と田向泰輝も冷静さを保つことに努めた。
象徴的な場面だったのは39分。自陣ペナルティエリア内での連係ミスからピンチを招くと、選手同士で厳しい言葉が飛び交った。その時、馬場賢治と船谷圭祐が手を叩きながら、冷静に戦うことを選手たちに促した。
馬場は振り返る。
「あの時間帯はチームの中から少し厳しい言葉が出始めていて、最低限あの状態で終わるために冷静に対処するべきだと思い、チームとして踏ん張りどころだと思ったので、そういう声をみんなにかけました」
流れが悪いながらも慌てることなく試合を進めて、1失点で切り抜けたことが逆転劇へとつながった。

気を引き締め直して次なる一歩を

後半は前半とは見違えるようなサッカーを繰り広げた。
「前半のようなサッカーを見せてはいけない」(鈴木雄斗)という強い気持ちをプレーで体現してみせた。躍動感溢れる西ヶ谷サッカーを取り戻した水戸。積極的な守備で高い位置でボールを奪い、両サイドから厚みのある攻撃を繰り出した。そして71分に左サイド田中雄大からのクロスを三島康平が頭で落とし、鈴木雄がゴールに蹴り込んで同点に追いついた。

その後も攻め手を緩めなかった水戸だが、なかなかゴールをこじ開けることができなかった。それも勝ち切れない今季の水戸を象徴しているようだった。しかし、そのまま終わるわけにはいかなかった。

この日、土砂降りの中、スタジアムには6500人を超す観客が詰めかけたことが選手たちの背中を力強く押した。「本当にこのまま終わっちゃダメだと思いました」(鈴木雄斗)と結果が出ない中でも昨年以上に熱くチームを支えてくれるサポーターに勝利をプレゼントしようと選手たちは中2日でコンディション的に厳しい状況の中でも気力を振り絞って走り続け、ゴールを狙い続けた。

そして90分、その思いが結実した。船谷が蹴った左CK、ニアに飛び込んだのは三島康平。ドンピシャで頭で叩きつけたボールはゴール右隅に吸い込まれていった。
いつもクールな三島だが、この時ばかりは喜びを爆発させた。バックスタンドに走り寄り、サポーターと抱き合って喜びを分かち合った。いつもは見せないその表情、その行動に、この1点の価値の大きさが表れていた。

その後の札幌の反撃をしのぎきり、試合は終了。歓喜に沸くスタジアム。クラブが一体となってつかんだ勝利、J2残留であった。
苦しみから解放された監督と選手たち、そしてサポーター。最高の笑顔でスタジアムは包み込まれた。
しかし、まだリーグは終わったわけではない。そして、J2残留が本来の目的でもない。これまでの苦しみを無駄にしないためにも、次節京都戦が持つ意味は決して小さくない。今季初のリーグ戦連勝を飾り、来季への希望を抱かせることが次なるタスクだ。残り1試合、J2残留で満足することなく、気を引き締め直して、次の一歩を踏み出してもらいたい。

(佐藤拓也)

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