HAMABLUE PRESS

【特別寄稿】神奈川新聞・横浜FC前担当の須藤望夢記者による惜別コラム「いつか、まだ見ぬ景色をともに」【無料記事】

 

ハマプレ読者の皆さん、お待たせいたしました。2023シーズンから神奈川新聞で横浜FCを担当を務められた、須藤望夢記者の特別コラムをお届けします。

歴代の神奈川新聞の担当記者で、須藤さんほど横浜FCに対して熱意と愛情をもって取材活動をしてくださった方はいないのではないでしょうか。西谷の練習場の近くに住んでおられて、いつも徒歩かママチャリでやってきて、すっかり熱心なサポーターになったという奥さんと息子さんとともに、アウェイの遠征に一家で駆けつけていたこともありました。

その須藤さんから社内の異動により担当を離れられるとお聞きしたのは昨年の10月。ハマプレとしてもとても残念でしたが、最後に昇格原稿を書けたことは須藤さんにとっても記者冥利に尽きたのではないかと思います。かつてスポーツ報知の担当だった田中孝憲さんやクラブのオフィシャルライターの青木ひかるさんとともに座談会や、昨年末はハマプレアウォードの総評にもご参加いただき、たいへんお世話になりました。ハマプレも心から感謝申し上げます。

今年はシーズン振り返りの座談会開催を見送ったこともあり、「ぜひ横浜FC担当として過ごした2年間の思いをコラムにつづっていただけませんか?」とお願いし、快諾いただきました。このコラムの見出し写真も、須藤さんの撮影によるものです。

ただ申しわけないのは、昨年の年末に書いていただきながら、公開するタイミングがなかなかなく、この新シーズン開幕直前となってしまいました。どうか再びJ1を戦う新シーズンへの期待とともに、少しだけ時間を巻き戻して、須藤記者と一緒にJ1復帰までの道のりを振り返っていただければ幸いです。

 

▼忘れられない光景

月日は百代の過客にして──と言いますが、瞬く間に過ぎた2年間の旅でした。寂寥感で終えた2023年、捲土重来を果たした24年。山あり谷ありの道のりを経たからこそ、旅情は一層深いものとなりました。改めて、横浜FCに関わる全ての皆様、昇格おめでとうございます。

ハマプレさんから貴重な機会を頂戴しました。会社員の悲しさで、明かせないこともあるけれどこの2年で感じたことを記させていただこうかと思います。感想文みたいになってしまうかもしれませんが、少しおつきあいください。

さて何から振り返ろう。まずは昨季最終節の山口戦でしょうか。既に12月1日での異動が決まっていたので私が横浜FCの試合を取材できるのは泣いても笑ってもこれが最後。だから、今まで温めてきたコメントやエピソードを世に出すのはここしかないなとメモを繰っているうちに書きたいことがどんどん増えていきました。デーゲームで予定稿を準備することはあまりないのだけれど、新山口駅に着くころには「あとはコメントを入れるだけ」という状態の原稿が15本近くになっていました。万全の準備はしてきたつもりでしたが、おかしなテンションだったかな。試合前から芥川さんや青木さんたちにいつも以上に話しかけていて「俺、今日変じゃない?」と自分で自分に突っ込みを入れるくらい。でも、そんな変な緊張を解いてくれたのは片原大示郎社長でした。スタジアムの入口でばったりお会いすると、「慶治朗に触発されました」って。思わず吹き出しちゃってすみませんでした。

昇格決定のメーン原稿はDFンドカ・ボニフェイス選手を中心に据えようと考えていました。理由は述べるまでもないでしょう。(第26節・ホーム)長崎戦での猛ダッシュは印象的ですが、リーグ随一の堅守は彼の存在なくして語れません。いつも強気かつ、ぶれない言葉の数々は胸に響くものがありましたし、まれに見せるいたずらっぽい笑みもまた引きつけるものがありました。ただ、万が一敗れたら、複数失点してしまったら水の泡。だから「事故みたいな失点はしないで」と祈りながら見つめていました。今季一番、心臓に負担が掛かった90分間でした。最後の笛が鳴ったときは勝ったような心境。歓喜の胴上げの後、四方田監督は僕らにも言葉を掛けて握手してくれました。あの光景はきっと忘れないんだろうな。

裏話をもう一つ明かせば、昇格に向けた準備を始めたのは9月の(第31節・ホーム)甲府戦後からでした。手記のお願いをしたり、ゲームスチュワードの方にお話をうかがったり。「(第34節・ホーム)鹿児島戦までには決まるだろう」。そんなもくろみでおりましたが……現実は厳しいですね。1カ月間、やきもきし続けました。早く決めてほしいと願いつつ、内心「ここで昇格が決まったらかなり切ないぞ」と。鹿児島戦までは昇格が決まればカラー面での大展開の構えだったのですが、足踏みが続いていた間、巻き起こったのは横浜DeNAの大躍進です。(第35節・アウェイ)仙台戦はクライマックスシリーズと重なって予定通りの分量は掲載できない公算が大きく、翌週の(ホーム)岡山戦は日本シリーズに加えて選挙や高校野球の関東大会も重なって「そもそもサッカーの原稿、載るの?」といった状況。(第37節・ホーム)栃木戦の日はベイスターズの日本一です。複雑だけど、最終節までもつれ込んだのは紙面的には大きな救い。休刊日を挟んで一日遅れにはなったけれど、その日の運動面で一番大きなニュースになったのでファン・サポーターの皆さんの記念になっていれば幸せです。

 

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