【2025シーズンスタート直前!】「日本から海外に行きたい選手、逆に海外から日本でプレーしたい選手にとって、MCOは大きなメリットがある」……山形伸之CEOロングインタビュー 中編【無料記事】
横浜FCの最高経営責任者であると同時にオリヴェイレンセのプレジデントでもある山形伸之CEOのロングインタビュー。中編は2023年から動き始めたマルチクラブオーナーシップ(MCO)の取り組みを中心にお届けします。
なお、今回のインタビューをより理解するために、2023年10月の拙コラム『【無料記事】ONODERA GROUPはマルチクラブオーナーシップで何をやろうとしているのか?【いちばん分かりやすい解説・前編】』と、『ONODERA GROUPはマルチクラブオーナーシップで何をやろうとしているのか?【いちばん分かりやすい解説・後編】』も併せて一読していただくことをお勧めします。なぜポルトガルなのか、なぜオリヴェイレンセなのか、そして移籍金ビジネスについても詳しく解説しています。
インタビューが行われたのが昨年12月ですから、『今年』や『今季』は2024年を、『来年』『来季』は2025年を指すことをご留意ください。
(インタビュー、文、写真/芥川和久。実施日/2024年12月23日)
▼MCOでオリヴェイレンセに渡った選手たち
──では実際にマルチクラブオーナーシップ(MCO)が始動してからのことをお伺いしたいと思います。まず2023年の2月、最初にカズさん、三浦知良選手が期限付き移籍されました。
「まず三浦さんは選手としてとにかく試合に出ることを求めていましたし、FWとしてゴールを決めることにフォーカスしている方なので、そのためにどこでプレーするのが一番良いのかを常に考えておられると思うんですよね。ヨーロッパでプレーするチャンスはなかなかない中で、ONODERA GROUPがオリヴェイレンセの経営権を取ったことから自然な形で興味を持たれたと思います。あとは当時の監督と直接お話しもされた上でプレーすることを選ばれた印象です」
──活発に人材の交流が始まるのかなと思いましたが、次は23年の8月、当時高校3年生だった横浜FCユースの永田滉太朗選手がトップチームとプロ契約し、期限付き移籍で海を渡ることになりました。そこはユース出身の若手で実績を作りたいといった考えもあったのでしょうか?
「それもありましたけど、まずは『選手がどう考えるか?』じゃないですか。『オリヴェイレンセって何ですか?』というところから始まってると思うし、そういったことをユースの子たちもトップの選手たちも理解を深めた上で行ってもらいたいというのが基本線ですね。オリヴェイレンセのプロジェクトを聞いて、永田はそこに興味を持ったので、『チャレンジしてみるか?』という話をしました。
横浜FCユースで永田の1年後輩の高橋友矢は、その永田の挑戦を見て『自分も行きたい』と熱望していました。アカデミーの子たちは、ちょうど2年生の冬から3月くらいにかけて進路の相談をしていくんですけど、彼はもうその時期にオリヴェイレンセが第一希望だったんです。それをしっかり叶えるためにコミュニケーションを取って実現させたという形で、実際にオリヴェイレンセと直接契約ということまで考えました(24年8月に横浜FCトップチームとプロ契約し、オリヴェイレンセへ期限付き移籍)」

▲今年5月に一時帰国し、横浜FCのトレーニングに参加した永田滉太朗

▲永田滉太朗の辿った道をなぞるようにオリヴェイレンセへと渡った高橋友矢
──横浜FCユースから今年8月にプロ契約した前田勘太朗選手あたりは、来年J1であまり試合に出られなかったら『行かせてくれ』と言い出しそうですね。
「そうですね(笑)。彼も海外志向が強いので、もちろんそういう話もしています。ただ、まだこれから3年生になる歳なので、やっていくうちにどんどん考えが変わっていく可能性もあります。代表にも選ばれている選手だから、オリヴェイレンセよりもっと良い海外のクラブからオファーがあるかもしれないし、それはもうフラットに、まずはちゃんと横浜FCと契約をして成長速度を上げて行こうということでプロ契約をしています。トップ昇格して横浜FCでそのままプレーするのか、オリヴェイレンセに行くのか、彼はバイエルンに短期留学もしていますからそれこそドイツのクラブから声がかかれば行きたいのか、本人の希望を聞きながら決めていければいいと思います」
──横浜FCのトップチームでプレーしていてオリヴェイレンセに行ったのは24年8月の宮田和純選手が初めてのケースになります。
「宮田はFC東京ユース出身で、私とFC東京ではかぶっていませんが交流はありました。彼はそもそも大学に行く気はなくて、海外に行きたかったんですよ。当時いろいろ海外にテスト行ったんですが、あまり上手くいかなくて、本当にギリギリで流通経済大学に進学を決めたと聞いています。だからもともと海外志向がすごく強くて、それを知っていたから、横浜FCで獲得するときから「夏までやってフィットしなければ夏のタイミングでオリヴェイレンセに」という話はしていたんです。新卒だと、そのときの戦術やシステム、チームの編成状況にもよって、すぐにフィットするケースもあればフィットしないケースもありますから、それは獲得前から宮田本人と流通経済大学の監督やコーチとも話していました。
先に5月にガイナーレ鳥取さんへ期限付き移籍したのは、鳥取さんから『ぜひ来てほしい』という話があったのがきっかけです。『欲しい』と言ってくれるクラブがあるなら、チャレンジしてもいいじゃないですか。試合経験を積めるなら成長するチャンスだと。それで鳥取さんにお世話になりました。クラブとしても育成型期限付き移籍で、試合に出て成長してほしいという思いで送り出しましたが、想像したようには試合に出場できない日々が続いたことで、初心に帰ってプラン通りにオリヴェイレンセに行かせたほうが良いんじゃないかということになりました」

▲トップチームから出場機会を求めてオリヴェイレンセに渡る初めてのケースとなった宮田和純。90分間強度高くプレーし続けられる特徴は海外向きでもある
──もう一人、これは横浜FCとの契約をまったく介さずに、MCOの留学事業から24年7月にオリヴェイレンセのプロ契約を勝ち取ったキーティング・タイラー選手については?
「彼もたまたまFC東京のジュニアユース出身です(笑)。私は当時FC東京にはいなかったので詳しくは分からないのですが、当時ユースへの昇格候補ではあったらしいものの、彼はアメリカ育ちなので学校の問題があって結局ユースには進まなかったと聞いています。それでアメリカのクラブに行ったり、東急SレイエスFCに行ったりしていたのですが、高校を出てから去年の12月にオリヴェイレンセに留学して、U-19チームの試合にも出場する中で高く評価されて、トップチームとの契約を勝ち取りました」
──MCOの留学事業でまずは一つ実績ができたということになりますね。今季の試合にもちょくちょく使われていますし。
「まあ実績とまで言えるかは分からないですね。まだこれからですよ。今チームがあまり調子が良くないので試合に出れているところもあるので、『そこは謙虚に考えた方が良い』と私なりにアドバイスはしています」
──確認になりますが、ポルトガルリーグには外国籍選手枠はないのですか?
「外国人選手の枠というのは決まってなくて、逆にポルトガル枠というものがあります。ただ、18歳から23歳まで6年間ポルトガルリーグでプレーするとポルトガル枠扱いになるんですよ。アフリカ人やブラジル人は18歳からポルトガルに入ってくる選手が多いので、ポルトガル枠になる選手も多いです。そういうチームの登録人数の枠はありますが、試合に関してはJリーグのように4人とか5人といった外国籍枠はなくて、全員が外国籍でも大丈夫です」
──ポルトガルU-23リーグへの加盟は今季(24−25シーズン)はかないませんでした。引き続いて来季(25−26シーズン)の加盟を目指していきますか?
「はい。ただライセンスは今季も取れましたし、来季も取れると思いますが、追加の審査があったり、たとえばチーム数の兼ね合いだったり(奇数になってしまう場合も)もありますし、こればかりは必ず招待してもらえるとはちょっと言えないところですね」
編注:このU-23リーグへの参加はMCOにとって非常に重要な意味を持ってきます。詳しくはコラム『【無料記事】ONODERA GROUPはマルチクラブオーナーシップで何をやろうとしているのか?【いちばん分かりやすい解説・前編】』をぜひお読みください。