【無料記事】有終の美。チーム史上最高成績の準優勝を達成……なでしこリーグ1部・最終節 ニッパツ横浜FCシーガルズ×スペランツァ大阪戦 マッチレビュー
▼2024プレナスなでしこリーグ1部・第22節(最終節)
10月20日(日) 13:00キックオフ/AGFフィールド(537人)
ニッパツ横浜FCシーガルズ 1-0 スペランツァ大阪(公式記録)
【得点】
64′ シーガルズ/河野朱里
なでしこリーグ1部のラストゲーム。勝点41で2位につけるニッパツ横浜FCシーガルズはAGFフィールドをホームに、勝点21で10位のスペランツァ大阪と戦った。
前半からシーガルズが圧倒する。スペランツァを自陣に押し込んで試合を進め、数多くの決定機を作り、時折りの相手のカウンターも新井を中心に処理して相手に決定機を与えなかった。後半も主導権を握ったまま64分、浦島里紗のペナルティエリア内右からのパスを小須田璃菜がシュートし、相手GKが弾いたこぼれ球を河野朱里が泥臭く押し込んで先制点を奪う。その後も選手交代しながら優勢に試合を進め、最終盤は押し込まれたものの体を張って守りきったシーガルズが勝点3を手にし、チーム初のなでしこリーグ1部準優勝を達成した。
【選手交代】(シーガルズのみ)
77′ 浦島→加田
86′ 蔵田→竹ノ谷、河野→田村
90′+1 室井→權野
▼成長とともにつかんだ準優勝
前節の結果でヴィアマテラス宮崎の優勝が決定し、シーガルズは同じく勝点41ながら得失点差で3位の朝日インテック・ラブリッジ名古屋と2位を争っていた。シーガルズの得失点差は『+12』、名古屋は『+11』で、その差はわずか『1』。総得点では名古屋が上回っていたため、この試合に勝ったとしても名古屋が大勝すれば得失点差をひっくり返される可能性もあった。
「最終節で、準優勝ができるかどうかの勝たなければいけない試合。そういったプレッシャーのかかる試合になると勝ちきれないところが、ずっと私たちの課題でした」と、キャプテンの新井翠は言う。石田美穂子監督は、「難しいことをやろうとせずに、今までのトレーニングで彼女たちは本当に全力で励んでくれて、悔しい思いもたくさんしてきたので、その強い気持ちを持って、シンプルに球際で戦うことだったり、走る、体を入れる、そういうところを強調して」シーガルズを試合に送り出した。
内容は圧倒したものの、「チャンスを決めきれない。『惜しい』だけで終わっている」(吉田凪沙)という、もう一つの課題が顔を出した。それでもチーム得点王の河野が、良い流れが継続しているうちにしっかり決めきり、後半は相手にシュートを許さずに勝ちきった。3位の名古屋も勝利したが、1点差の勝利だったために得失点差は縮まらず、2位を確保してシーズンを終えた。
昨季はリーグ前半戦を首位で折り返しながら、後半戦で崩れて5位に終わっていた。今季は前半戦折り返し時点では宮崎、名古屋に次ぐ3位。負け数は宮崎と同じく1敗だったが、石田監督が「今季は勝ちきれない試合、引き分けが多かった」と振り返ったように、3引き分けしていたために、引き分けゼロの宮崎との勝点6差、1分3敗の名古屋との勝点1差になっていた。
リーグ後半戦、最初の相手(第12節)は宮崎だった。首位を相手に食い下がったが、アディショナルタイムに力尽きて被弾し、0-1で惜敗した。「そこが一つのターニングポイントになった」と石田監督は言う。
「昨年はそこからガタガタッと勝ち切れなくなっていってしまいましたが、優勝を諦めることはなかったですし、タフさや勝負強さ、そういうメンタリティが選手たちに備わったと感じました」
その宮崎戦から1週間後の第13節・ASハリマアルビオン戦からその萌芽が見て取れた。アウェイで前半に先制し、後半に追いつかれる嫌な展開だったが、宮崎戦とは逆にアディショナルタイムに、途中出場した20歳の櫻井まどかが勝ち越しゴールを挙げてみせたのだ。「私たちは最後まで諦めないチームだと確信できました」とキャプテンは言う。そして第16節の伊賀FCくノ一三重戦では、後半に1-3と突き放されてから追いついたことで、「追いつく力が私たちにはあるという自信を持てて、それ以降の試合では、追いつくことはできるから今度は追い越そうと意識してできました」(新井)。
第19節を勝利で終えて、首位・宮崎との勝点差は『2』に縮まった。しかし第20節・名古屋戦を3-4で落とすと、続く第21節・静岡SSUボニータ戦を0-3で落とし、優勝の可能性は潰えた。その敗戦直後のロッカールームで、石田監督は「まず切り替えることと、とにかく2位で終わるということ」を、ここまで順位に関して自ら意識しないことはもちろん選手にも意識させなかった指揮官には珍しく「ハッキリと伝えました」という。
この最終節で、選手たちはしっかりそれに応えてみせた。後半戦も「ここだ、というところで勝ちきれなかった試合が多かった」にしても、「昨年よりも勝点数は増えましたし、昨年を上回る2位という結果で終われたことは、着実にステップアップしていると感じています」と、指揮官は選手たちの成長に目を細めた。
ただ、まだシーズンを総括するには早い。シーガルズは11月24日から皇后杯を戦う。勝ち進んでWEリーグのチームと対戦し、「私たちの実力がどのくらいかを測りたいし、証明したい」と新井キャプテン。トップチームの日程が終わっても、年末まで続くであろうシーガルズの戦いに注目してほしい。
(写真と文/芥川和久)