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【無料記事】国立頂上決戦! 青と白の革命を起こせ……2024-J2第33節・清水戦(A) プレビュー

 

▼リーグ最強の攻撃力を誇る清水

清水は前節、アウェイで藤枝に3-2で勝利した。立ち上がりからチャンスを作った清水だったが、決めきれずにいると主導権を藤枝に握られ、28分に先制される。その後もCKから2失点目を喫したかに思われたが、GKの前に立っていた選手がオフサイドを取られノーゴール。しかし後半、矢島慎也をボランチに入れて攻撃的に出た清水が52分から60分までの8分間で3得点を奪い、アディショナルタイムに1失点したものの強さを見せて勝ちきった。

これで清水は再び首位の座に立った。第26節から7試合負けなしで、現在3連勝中。横浜FCとの勝点差はわずか『1』だが、勝ち数では横浜FCよりも二つ多い23勝を挙げている。逆に言えば負け数が多く、7敗しており、横浜FCと長崎の4敗はもちろん4位・岡山の6敗よりも多い。得点はリーグ最多だが、失点の少なさはリーグ5位タイなので、そういうことになっている。一試合平均失点は『1.0』をわずかに超える程度なので決して守備が弱いわけではないが、藤枝戦のようにダイナミックにスコアが動く試合が多いとは言える。

そこはJ1勢と比較しても中程度のチーム人件費=戦力を抱えている上に、攻守にアグレッシブなサッカーで水戸を躍進させた秋葉忠宏監督の性格が合わさった結果だろう。圧倒的な戦力で正面からねじ伏せる。32試合やって引き分けが二つしかないというのも白黒はっきりしている。ハマって大量得点で勝つことも多いが、ハマらなければあっさり負けることもある。横浜FCとの前回対戦がその象徴と言ってもいい。

データで見ても(FOOTBALL LABより)、ボール保持率はリーグ3位と安定して主導権を持って試合を進めており、シュート数が2位で得点数はトップということは決定力ももちろんリーグトップ。30メートルライン侵入回数、ペナルティエリア侵入回数のいずれもリーグトップで、崩して点を取る力はリーグ最強だ(横浜FCはシュート数は1位だが得点数4位。30メートルライン侵入回数、ペナルティエリア侵入回数ともに2位)。

 

▼予想フォーメーション

▲ユーリ・ララが出場停止から復帰。右のシャドーにカプリーニかJPか迷うところだが、前回対戦の完勝に貢献したカプリーニに期待。JPのほうがサブとしてプレーの幅も広そうだ。清水は前回対戦ではベンチスタートだった乾貴士が完調で出てくる。互いにベストメンバーでガチンコ勝負だ

 

▼中央突破を食い止めろ

前回対戦で横浜FCは小川慶治朗とカプリーニの二人を9試合ぶりにシャドーで同時起用し、守備では積極的に前からボールを奪いに行き、攻撃でも相手の背後を襲うことで主導権を握った。『とにかく前へ』という意識の強さで圧倒した試合だったが、「あのとき清水はすごく良い状態(7連勝中)で、逆に自分たちはそんなに良い状況ではなかった。本当にチャレンジャーの気持ちを持って挑めたからこそだったと思う」と井上潮音は振り返る。

四方田監督も前回対戦の勝因を、「首位にいた清水をやっつけて、少しでも差を縮めていくという気持ち、そういう(サッカーの)ベースの部分で上回ることができた」ことに求める。だとすれば今回、直前に首位の座を奪い返され、3位と勝点差を詰められた状況で迎えることは、横浜FCにとって決してマイナスではない。

前回対戦と違うのは、乾貴士の存在だ。当時の乾は怪我明けで、チームも乾の不在時は[4-4-2]を試すなど試行錯誤していた。ベンチスタートだった乾は54分から出場したものの、本調子にはほど遠かったはずだ。その後、乾が復調してきてからはチームも波に乗っている。「攻撃がかなり噛みあってきているし、個人個人でかなり調子が上がっている」と四方田監督は見ており、特に乾については「状況を打開できる点でやはり非常に危険な存在」と名指しで警戒する。

ただ乾がいるためもあり、清水の攻撃は中央突破に偏りがちだ。ルーカス・ブラガやカルリーニョス・ジュニオ、西澤健太にしてもウインガーのタイプではなく、中に入ってのプレーを好む。チームとしてクロス数ではリーグで11位だ。横浜FCとしては3バックと2ボランチに随時シャドーも加え、中央を固く締めて戦いたい。「コンパクトさをしっかり保って、特に乾選手を自由にさせないように意識したい」とキャプテンのガブリエウは言い、「守備が堅くなればなるほど、相手が攻撃に力を入れる(人数もかける)ことで、自分たちも攻撃しやすくなる」と続けた。

中央突破が成功すれば即ち決定機になるので清水の得点は多い。しかし逆に、サイドよりも中央でボールを失うほうが危ないのは自明の理で、それも清水の失点が決して少なくない(とはいってもリーグで5番目には少ないが)理由の一つだろう。リーグ最強の攻撃力を誇る清水が相手であっても、J1の昨季から積み上げてきた、1試合平均失点『0.6』の堅守をベースとして勝機は十分にある。

舞台となる国立競技場の発券枚数は6万枚を超えたという。J2歴代最多の入場者数となることは確実だ(記録は昨季の清水×千葉の47,628人)。もちろんコロナ禍にも見舞われた近年の横浜FCにとっては未体験の数字であり(昨季最高はアウェイ名古屋での33,235人)、過去最高の2007年開幕節・アウェイ浦和戦の57,188人をも超える可能性がある。

清水はサッカー王国のオリジナル10たる威信をかけ、来場する清水サポーターへ4万枚のシャツを配布し、国立をオレンジに染める構えだ。2007年以来経験したことのない5万人超えのアウェイ戦となる。しかしこの状況に奮い立ってこその横浜FCだ。「数千人来てくれる横浜FCサポーターと一体になって、最高の悪役になれれば。シーンと静まり返らせたいですね」と四方田監督は不敵な笑みを浮かべる。

勝てばJ1復帰へ大きく、そしてJ2優勝へ半歩近づく。首位決戦に史上最高の舞台が整った。オレンジに染まる国立に、青と白の革命を起こせ。

(文/芥川和久)

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