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【無料記事】首位撃破!!……2024-J2第16節・清水戦(H)マッチレビュー

 

▼清水の後半の攻勢をしのいで押し返す

ビハインドとなった清水だが、前半のうちに流れを変えることはできなかった。同じ[3-4-2-1]のミラーゲームに変更はしていたが、それによって逆に「より分かりやすく守備ができたし、相手のプレッシャーもあまり強くかかっている感じはなかった」と山根永遠は振り返る。その後も横浜FCは大きな決定機こそなかったが、清水ゴールを脅かし続け、前半を通じて9本のシュートを放った。

井上潮音は前半、「チーム全体のボールに対しての反応が清水を上回っている」と感じていた。それは彼が表現した通り、「頭の回転が上回っていた」ということなのだろう。ゴールデンウイークの連戦を終えた疲れが出たのか、7連勝で独走体勢に入っている気の緩みなのか、清水の動きは緩慢だった。41分、ボランチからの縦パスを受けようとしたルーカス・ブラガがまったく無警戒で福森晃斗にインターセプトされて攻め込まれる場面があり、43分には市川暉記のパントキックから、清水のCBの目の前でカプリーニが胸トラップして反転しロングシュートを狙い、権田修一がブチ切れる場面もあった。

おそらくはハーフタイムに秋葉監督の雷が落ちたに違いなく、後半キックオフから清水の反撃が始まる。開始12秒で北川航也の裏へのランニングでCKを得ると、4分までに3つのCKを獲得。6分のCKからカルリーニョス・ジュニオの強烈なヘディングシュートが枠内を襲うが、市川暉記が素晴らしい反応で弾き出した。

清水は54分に北爪健吾と乾貴士を投入。乾が中央でボールを受け、北爪、ブラガ、そこに原輝綺も絡む右サイドの攻撃で横浜FCにとっては苦しい時間が続いたが、押し込まれながらもこの時間帯をしのいだことが大きかった。「慌てずに守れた。後半途中からまた押し返してハイプレスが効いて、相手陣に攻める時間を長くできたことで、最後まで選手(の運動量)がもった」と指揮官が語ったように、60分過ぎに横浜FCが自分たちの時間を作ると、終盤に再び猛攻をかけた清水にチャンスが訪れることはなかった。

 

▼これを継続できるか

清水は65分にブラガに代えて松崎快をピッチに送り、75分には西澤健太とドウグラス・タンキを投入して交代枠を使いきり、再び4バックに戻した。横浜FCにとって幸いだったのは、これによって清水の中盤は、アンカーに中村亮太朗がいて、その前方に乾、松崎、西澤と10番的にプレーするMFが集まる形となり、結果的に攻撃は「中へ中へと行きすぎてしまった」(秋葉監督)。

いくら技術の高い選手が流動的に動いてきても、結局は強引な中央突破に終始し、3バックと2ボランチに随時シャドーも加わって中を固めた横浜FCがはね返し続ける。アディショナルタイムには前がかりにボールを奪いにきた清水を自陣で伊藤翔が引きつけ、和田拓也とのワンツーから中村拓海へのロングスルーパスで一気にひっくり返した。拓海のクロスにヘディングで合わせた櫻川ソロモンのシュートは清水のCBに当たってこぼれ、「中に入ればチャンスがあると思って」走り込んだ伊藤翔が押し込む。2-0。横浜FCが上位対決を完勝で制し、クラブのJ2通算300勝に華を添えた。

2-0の完勝ということでは第3節の山形戦が思い起こされる。同じく2試合勝ちなしで迎えたあの試合でも、背後へのスプリントと前線からのプレスで試合の流れを引き寄せたのは、初先発で起用された小川慶治朗だった。この試合で彼はシュートを打てずに終わり、アタッカーとして本人も満足していないことはうかがえるが、山形戦とこの試合での彼の貢献には得点以上の価値があった。

ただこれも山形戦のレビューに書いたことだが、「問題は、これを継続できるかどうか」だ。実際、山形戦に続く第4節・栃木戦では背後をケアされ、相手にボールを持たされて今季初黒星を喫した。昨季もJ1で、神戸やマリノスといった当時の首位から金星を挙げながら、残留争いをしているチームとの直接対決をあっけなく落とした。今季も2連勝まではできるが3連勝以上できないのが、優勝争いに加われていない要因だ。

2試合勝ちなし(1分1敗)と足踏みし、首位・清水とは勝点12差に離された状況で迎えた試合までの準備期間、「自分たちの使命であるJ1昇格のためにはこれ以上(上位と)離されてはいけないという鬼気迫るものがあった」と慶治朗は言い、「いつもよりピリピリした空気があった」とチーム広報は証言する。第12節・秋田戦、第13節・水戸戦と連勝していたときの、しっかりビルドアップして敵陣でボールを保持して崩すサッカーをいったん置いて、慶治朗を生かす戦い方に統一できたのもその状況ゆえだろう。

確かに首位に勝ったが、それはJ2を独走している清水であってもパフォーマンスが良くない日があるということで、なおさら次の勝利が約束されるわけではない。伊藤翔の言う通りに「結局、勝点3を取っただけ」であり、4位にいる状況も変わらない。試合前に思い描いていたように、首位から挙げた勝利が勝点3以上の価値を持つかどうかは、今後もこの試合のような気迫、クオリティを継続していけるかどうかにかかっている。

(文/芥川和久)

 

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