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内容に結果も伴うシーソーゲーム……ルヴァンカップ1stラウンド2回戦・岡山戦(A)マッチレビュー

 

▼2024JリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド2回戦

4月24日(水) 19:03キックオフ/シティライトスタジアム(2,827人)

ファジアーノ岡山 3 (4 PK 5) 3 横浜FC(Jリーグ公式サイト

【得点】
15′ 岡山/田中雄大
42′ 横浜FC/小倉陽太
55′ 横浜FC/櫻川ソロモン
60′ 岡山/木村太哉
93′ 岡山/田中雄大
107′ 横浜FC/カプリーニ

 

オープニングシュートは5分、今季公式戦初先発のグエン・コン・フオン。村田透馬が内側に入れたパスから、ミドルシュートはGK堀田大暉のセーブに阻まれた。その後、両者1回ずつペナルティエリアに入るチャンスを作り、試合が動いたのは15分。岡山は横浜FCの左サイド深くで仙波大志がキープし竹内涼に落とすと、最終ラインの裏に飛び出した田中雄大が、竹内の絶妙なワンタッチクロスをゴールネットに突き刺した。

勢いに乗った岡山にボールを握られ、押し込まれた横浜FCだが、和田拓也の効果的な配球で次第にペースをつかむと、42分に小倉陽太が櫻川ソロモンにスルーパス。キープしたソロモンのリターンから小倉がスーパーミドルを決めると、後半も相手を押し込んで55分、和田のミドルシュートのこぼれに反応したソロモンが押し込み逆転に成功する。

しかし60分、ロングボール一発で木村太哉に抜け出されて同点とされ、以後は連続でピンチを迎える場面をしのいで延長戦に突入。早々の93分に左サイドのスローインから一気に攻め込まれて再逆転される。それでも「ユースの選手を含めたメンバーがとにかく前向きに、諦めない気持ち」(四方田修平監督)を見せた横浜FCは、107分に分厚い三次攻撃からカプリーニが反転ボレーシュートを叩き込む。その後も猛攻をかけるがこじ開けられなかった横浜FCだったが、永井堅梧が一人を止めたことでPK戦を制して3回戦に駒を進めた。

 

【選手交代】(横浜FCのみ)
68′ 和田→三田、コン・フオン→カプリーニ
79′ 新井→ボニ、村田→橋本
90′+3 小倉→宮田
105′ ソロモン→前田勘太朗

 

 

▼内容に結果も伴うシーソーゲーム

今年からJ2、J3にも門戸を開き、序盤は一発勝負のトーナメントに大会方式が変更されたルヴァンカップ。横浜FCは2回戦から登場した。

昨年はグループステージがあり、相手は広島、名古屋、神戸と、カップ戦もタイトル獲得を目標とする強豪ばかりが相手だった。比べれば横浜FCにとっては、カップ戦のタイトルよりもリーグ戦の目標(残留)が最優先で、ルヴァンカップは主力の休養&戦力底上げの場という位置付けに見えた。

しかし今季はJ2、J3も参加し、負ければその場で試合の機会さえなくなる。アライバルインタビューで大会の位置付けを問われた四方田監督は、「勝ちにこだわって一つでも上に行く」としながら、「日ごろ出ていない選手にチャンスを増やしたい」とも語った。3日前のJ2リーグ第11節・長崎戦からターンオーバーは10人だが、ンドカ・ボニフェイスの出場停止で4日後の第12節・秋田戦に出場することになる岩武克弥を3バックの中央に、また中村拓海や村田透馬、中野嘉大、和田拓也といった準主力も先発させたことは、昨年よりも「勝ちにこだわる」ことの比重が上がっていることを印象づけた。

初のルヴァンカップとなる岡山も、おそらくは横浜FCと位置付けは同じだろう。J1昇格という最大のチーム目標があり、主力をできるだけ休ませつつ、勝つことで戦力を底上げする機会を確保し、さらにはチームの士気を高めるためにも同じJ2でしかも昇格争いのライバルには負けられない。横浜FCが福森晃斗やユーリ・ララ、髙橋利樹らを帯同させていないように、岡山も田上大地や藤田息吹、グレイソンらをベンチに入れていないが、一方で阿部海大を先発させ、本山遥や岩渕弘人を逐次投入してきた。

昨年のグループステージでは、チームにとってカップ戦の位置付けの違いから、控え組同士の前半は横浜FCが善戦しても、後半から相手が主力を投入してきて力負けてしまう試合が多かった。しかしこの試合は、最初から最後まで拮抗したシーソーゲームとなった。先制され、逆転するが逆転し返され、最後に同点に追いつく。その手に汗握る展開に加えて、この試合を面白くしたのは、やはりここまで出場機会に恵まれていない選手たちの、試合にかけるモチベーションの高さにあっただろう。

「前半の入りからしっかりみんながボールを受けて、相手を動かしてという入りができた」と、メンバーの中で最も経験値の高い和田拓也が振り返ったように、プロデビューとなる小倉陽太や佐藤颯真、1年ぶりの公式戦出場となったグエン・コン・フオンも臆することなく堂々とプレーした。試合を通じてボール保持率は横浜FCが59%で岡山が41%で、シュート数も15対12と上回っている。

「競争がチーム内で生まれることが強くなるには必要で、今日出た選手がリーグ戦に絡んでいくようになると、良いサイクルや相乗効果がチームの中で生まれる。今はリーグ戦でそんなに良い内容ではなく結果も伴っていないけど、こういうところから流れを変えていければ」(和田拓也)

リーグ戦ではある程度の勝点を積めていたものの、第3節・山形戦のあとからは内容でも上回る会心の勝利を挙げられておらず、前節は2位の長崎に0-1で敗れてスコア以上の力の差を見せつけられた。序列はある程度固定され、まだ序盤にもかかわらず閉塞感めいた空気も漂い始めた中で、このルヴァンカップでの控え組の躍動は主力組に刺激を与え、チームを活性化させるはずだ。まずは4日後、難敵・秋田とのアウェイゲームでチームに生じる変化を楽しみにしたい。

 

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