HAMABLUE PRESS

【無料記事】最高のダービー……J1第25節・マリノス戦(H) マッチレビュー

 

▼2023明治安田生命J1リーグ 第25節

8月26日(土) 18:33キックオフ/ニッパツ三ツ沢球技場(13,321人)

横浜FC 4-1 横浜F・マリノス(Jリーグ公式サイト

【得点】
9′ マリノス/アンデルソン・ロペス
36′ 横浜FC/林 幸多郎
52′ 横浜FC/伊藤翔
62′ 横浜FC/オウンゴール
90′+3 横浜FC/吉野恭平

 

同じ横浜をホームタウンとする横浜F・マリノスとの横浜ダービーは、横浜FCにとって屈辱と反骨の歴史だった。親会社の規模、資金力の差は埋め難く、それがトップチームの力の差に反映されている。横浜FCが誕生して24年、その間マリノスは一度もJ2に降格することなくJ1優勝4回を誇り、横浜FCの主戦場はJ2だったために、同じカテゴリーで戦った年は2007年、20年、21年、そして今年で4回目だった。

アウェイの日産スタジアムで行われるダービーは、その力の差がそのまま表れ、07年は1-8、20年は1-4、21年は0-5と圧倒された。今季の第7節も0-5で大敗を喫している。

しかし横浜FCのホーム、ニッパツ三ツ沢球技場で行われるダービーでは、不思議と横浜FCは負けたことがない。07年は1-0、20年は3-1、そして21年は2-2で2勝1分。ホームでのダービーでは負けない。それが資金面でも成績でも大きな差がある同じ街のビッグクラブに対して、横浜FCが持ち続けている意地と誇りだった。

監督や選手が入れ替わっても、クラブとサポーターに受け継がれてきたその思いは変わらない。四方田修平監督が「われわれにとって最高の結果、最高のゲーム、本当に素晴らしかった」と語った大逆転劇を振り返ろう。

 

【選手交代】(横浜FCのみ)
72′ 山根→近藤、慶治朗→坂本
77′ 山下→カプリーニ、伊藤翔→マルセロ
82′ マテウス→吉野

 

 

▼ハイプレスの決断

中断期間明けからの横浜FCは、第22節・神戸戦で当時の首位に2-0で快勝したように、引いて相手にボールを持たせ、ボールを持つことで生じる隙をカウンターで突く戦い方を鮮明にしていた。しかし前節・C大阪戦では引きすぎて相手の得意なクロス攻撃を誘発し、ボールを奪っても有効なカウンターが打てなかったことで、「ある程度は前からボールを奪いに行く」ことを指揮官は決断した。

ただ、「まずはしっかり守って失点しないことが最優先」(林幸多郎)である以上、前からボールを奪いに行くのは「ある程度」にならざるを得ない。伊藤翔を1トップに配したのは、攻撃時に前線でタメを作ってシャドーのスピードを生かすとともに、「(プレスに)行くところは行く、(守備ラインを)落とすところは落とすという判断」(四方田監督)をベテランの豊富な経験に託したためだ。

観客数は今季最高の1万3千人を超え、試合前から両チームのサポーターが熱の入った応援合戦をくり広げていた。その熱気に煽られるように、横浜FCはキックオフから「私が考えていた以上に選手が高い位置からプレッシャーをかけていった」(四方田監督)。当然、そのプレスをはがされて攻め込まれる、あるいはロングボールでひっくり返される場面は出てきた。一方で、7分には相手CKから超高速ロングカウンターを発動。右サイドを駆け上がった山下諒也から中央でフリーの伊藤翔にパスが通るが、トラップがわずかに長くGK飯倉大樹に詰められた。

その直後、前線からのプレスで渡辺皓太からボールを奪った山下がミドルシュートを放つが枠外。受け身になったほうがやられる、そんなテンションの高い立ち上がりだったが、9分に早くも試合が動く。マリノスが最終ラインから対角のロングボールでエウベルと林の1対1の場面を作り、エウベルのシュートを永井堅梧が弾いてCKを獲得。9分のそのCKからアンデルソン・ロペスが豪快に頭で押し込み、アウェイチームが先制した。

 

次のページ

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ