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【無料記事】寺田紳一「今はサッカーのことを毎日、選手時代より考えてます」……OB数珠つなぎインタビュー第1回・前編

 

▼僕がいたころのガンバみたいなサッカーがやりたい

――選手時代よりサッカーを考えるようになって気づいたことは?

「まず、自分なりに考えてサッカーしてたつもりやったですけど、全然サッカーのこと知らんかったんやなって、今すごい感じてます。やっぱり俺は感覚でやってきたタイプなんやなって(笑)。考えてたつもりやってんけどな、って。だから本当に勉強してる感じです。日々、練習方法を指導しながら、ほかの人の指導を見て、話してることを見て、若いころの選手時代に戻った感じです。歳をとってきて、自分の形ができてきたら、なかなか吸収するのって難しいところもありましたけど、今はいろんなものをとりあえず吸収して、その中から自分に合うものを選んでいくという作業をしてるので。本当に、選手の若かったころに戻った感じです」

 

――自分はサッカーのことを知らなかったんだなと感じたのはどんなとき?

「いろんなシステムが、[4-4-2]とか[4-3-3]とかあるじゃないですか。そのシステムは何が強みがあって、どこにウイークポイントがあってとか……、そこからです(笑)」

 

――いやいや、選手のときに普通にそういうの話してたじゃないですか。

「もちろん普通に選手としてはやってましたよ。ここが空くから突いていこうとか、ここをカバーしてとかいうのは。でもそれをみんなに伝えるときに、このチームにはこういう選手がいてこのシステムが合うんやろうなとか、相手がこういうシステムやからウチはこういう立ち位置でやろうとか、そんなんよりも、自分たちの強みを全面的に出せばいいんじゃないかなとか、いろいろ考えてると分からんくなる(笑)」

サッカーについて頭にあることを言葉にするのは、プレーするよりも難しい

 

――感覚派から理論派への道は遠そうですね。

「まあサッカー詳しい人っていっぱいいるじゃないですか。だからもし、今すぐ監督やってくれって言われたら、そういった詳しい人を右腕に、いや3人くらい置いておきたい(笑)」

 

――でも感覚的には分かってプレーしてきてたわけですよね?

「そうですね。そのシステムでこのポジション取ったらここが空いてくるとかは分かりますけど、このシステムの相手にはこのシステムでいけばいいんじゃないかとか、それを考えるよりは、相手のシステムがどうだからウチはこうするじゃなくて、ウチはこれでいく、相手によって変えるというのは僕は今のところはないなと。相手によって変える人もいるかもしれないけど、相手のシステムは関係なく、ウチはこれが一番の強みだからこれでいくという、僕はそういうほうが合ってるかな。今のところ、ですけど」

 

――守備でどう相手に対応するかよりも、やっぱり攻撃のことを考える?

「攻撃のことに関してはけっこう言えるんですけど、守備でどういうふうに守るというのは、植田龍仁朗がもともとディフェンダーだったから、いろいろ話を聞きながら勉強しているところです。前線からボールを奪いに行きたいときはどういうふうに、どこで、誰が、とか。それはA級でもちょうどやっているところなので」

 

――勉強のためにサッカーを見るとかもありますか?

「選手のときよりは見てますね。でもそんなに見てないほうだと思います(笑)」

 

――どこかのチームみたいなのがやりたい、とかは?

「特にないですね。マンチェスター・シティとかアーセナルのドキュメントとか、アマゾンプライムでやってるの好きで見たりするんですけど、こういうサッカーがしたいというのは……。A級を受けるときに、最初に提出する資料があるんですけど、そこに『何をこのA級で学びたいか』という欄があって、そこに『自分がどういうサッカーをしたいかというのがないので、それが自分の中で出来上がるような場にしたい』と書いたくらいなので(笑)。ここから自分のやりたいサッカーがだんだん見えてきたらいいんじゃないかなと。無理に今、もちろんペップ(グアルディオラ)とかアルテタとか好きなんで、試合は見ちゃいますけど、かといってそういうサッカーをしたいというのは、今はないですね」

 

――中盤のドリブラーで監督になった人というと、ヴェルディで監督していた永井秀樹さん。あの人は「ボール保持率80%、パスを800本つないで、5-1で勝つのが理想」と言っていました。「サッカーはボールを持つのが楽しいんだから」と。

「もちろんボールは相手より持ちたいとは思うけど、自陣でずっと回して無理に攻めなければ8割持てると思うんで(笑)。僕の中ではガンバにいたときのイメージがやっぱり強くて。当時、大木武さんの甲府と試合したときに、確かに甲府の選手、チームがやってることって細かくボールをつないで面白そうやなとは思ったんですけど、結果は5-1でガンバが勝って。僕もリーグ戦で初ゴールを決めたんですけど。ガンバは効率よく攻めてて、別に無理しないで回すところは回すし、『ここや』ってとこは一発で行くし。僕はそういうサッカーのほうがしたくて。相手が背後が弱いって思うんやったらどんどん蹴ればいいし、引いて守ってくるんやったら自分たちでボールを握りながら間を見つけて、隙を見つけて攻めればいいし。ボールをずっと握っておきたいというより、選手たちが相手の弱みを見つけられて、効率よくやれればいいので。そのときのガンバはそうやったから。もちろん守備に難があったのは確かですけど(笑)」

 

――でも相手より多く点を取ればいい、と。

「はい。そういうサッカーを僕はしたいというか、それができれば結果にもつながりやすいと思うし。やっぱりプレーしてても、良いサッカーしてても負けたら結果は面白くないんで。やっぱり大人の、トップのカテゴリーというのは勝ってこそ楽しいんで。そこを追求したいなとは思いますね」

 

――目指すサッカーを一言で言い表すのはなかなか難しそうですね。

「まだ漠然としたところもあるので。ここも今、勉強中です。言語化と言われるところ(笑)。自分の頭の中ではワーッとイメージがわいてるんですけど、こういうインタビューで言葉にするのはムズい。それじゃアカンやろって思いますけど(笑)」

指導者として日々勉強中

 

――ティアモはJFLで今季13位に終わりました。コーチとして過ごした1年を振り返ると?

「全然、自分でプレーするほうが簡単というか楽というか(笑)。指導者って本当に難しいなと思いました。いろんなことを考えて、トレーニング一つとっても選手のことを考えてやってますし、30人近い選手がいて、それを一つにまとめるというのはなかなか難しいことなんだなと感じました。一番は、もっともっとサッカーのことを勉強しないといけないなと。この職業を続けていくなら、そうしないといけないと痛感しています」

 

――来年は二川監督の下でコーチを?

「そこはまだ決まってないです。でも指導者として、もうちょっとチャレンジしたいなと。中村俊輔さんの記事とかを読んで、失敗も成功もいろいろ経験しながらやっていければというのは、本当にそうだなと思って。もちろん自分もこれだけプレーしてきたんで、『そこはそうなんじゃないかな』と思うところもありますけど、サッカーには正解がないので、いろんな人のサッカーを見て、聞いて、学んで、その中で自分に合うものが見つかればいいなと思います。僕も、『俺はこういうサッカーがしたいねん!』っていうものを、持っておければ良いと思いますけど、まだそれは正直、見つかってなくて。それよりも今はいろんなことを学んで、その中で見つけていけたらと感じています」

 

――二川さんが監督になるのも面白そうですね。

「やってきたことは間違いないですよね。ただ、フタさんが試合前に選手のモチベーションを上げるために何かをしゃべっているイメージがまったくわかない(笑)。もしそれをいきなりパッとやり始めたら、申しわけないけど笑っちゃうかもしれないです(笑)」

 

――寺田さんはできるんですか?

「いや、どうなんやろ? フタさんよりはできると思う(笑)」

 

――寺田さんと二川さんがベンチで相談とかしてる絵だけでも面白いですよ。ガンバのサポーターとか見に来るんじゃないですか?

「あいつら何の話してるんやろ?って(笑)。まあ見に来ていただけたらありがたいですけど」

 

――では次から、あらためて横浜FC時代のお話を振り返っていただきましょう。

「ようやく本題ですね(笑)。僕、サッカー選手としては、横浜FCでの思い出が一番あるかもしれない」

……中編に続く

(文、写真/芥川和久)

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