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【無料記事】昇格の夜。中村俊輔、三ツ沢でのラストダンス……2022シーズンJ2第41節・金沢戦(H)マッチレビュー

 

▼2022明治安田生命J2リーグ 第41節

10月16日(日) 18:03キックオフ/ニッパツ三ツ沢球技場(8,538人)
横浜FC 2-3 ツエーゲン金沢
【得点】
31′ 金沢/杉浦恭平
34′ 金沢/林誠道
46′ 金沢/松本大弥
66′ 横浜FC/クレーべ
72′ 横浜FC/クレーべ

 

14時にキックオフされた岡山と秋田の試合で岡山が敗れ、試合前に横浜FCの自動昇格が決まった。チームバスが三ツ沢に到着する直前のことだったといい、バスの中は歓喜に包まれた。

岡山が50分に先制。その9分後、秋田はカウンターから青木翔大のスルーパスに齋藤恵太が俊足を飛ばして抜け出し、同点に追いついた。横浜FCにとっては引き分けでもOKだったが、アディショナルタイムに青木が追加点を奪い、岡山の引き分け以下、横浜FCの自動昇格を決定づけた。1ゴール1アシストした青木は、桐蔭横浜大学から2013シーズンに横浜FCに加入。2015シーズンまで3年間在籍したが、そのうち半分は長野や琉球に期限付き移籍しており、横浜FCでは4試合の出場にとどまった。バスの中に横浜FCで青木とプレーした選手はすでにいなかったが、誰もが彼に感謝したに違いなく、彼の加入直前に引退した早川知伸ヘッドコーチ、彼の在籍時にユース生だった齋藤功佑は特大の恩返しにジーンとしていたことだろう。

四方田修平監督だけは、「自分が喜んでちゃいけない」と指揮官らしく冷静を保ち、「喜び過ぎずに試合に集中しよう。可能性がある限り、優勝を目指して戦おう」と選手たちを送り出した。前日に試合を終えた新潟とは勝点4差。勝てば勝点1差で最終節に持ち込める。ホーム最終戦、横浜FCにとっては三ツ沢で初めての声出し応援試合でもあった。

【選手交代】(横浜FCのみ)
46′ 山根→山下
61′ 功佑→田部井、マルセロ→クレーべ
69′ ゼイン→武田
73′ 和田→俊輔

 

▼ロングボールとカウンターで3失点

横浜FCはスベンド・ブローダーセンが復帰し、右CBには中村拓海が4試合ぶりに先発した。そしてベンチには中村俊輔が、約5カ月ぶりのベンチ入り。勘の良い人ならここで胸騒ぎがしたのだろうが、この時点ではまさかそんなことは思いもしない。5月21日の第17節・新潟戦に9分間出場し、その後しばらく練習でも見かけなかったが、右足首を手術していたと後に知った。酷暑が続いた夏の練習公開日、天然芝グラウンドの片隅で、あるいは隣の人工芝で、トレーナーを相手にボールを蹴り続ける姿を見ていただけに、とにかく復帰を喜ぶ気持ちしかなかった。ただ、タイトなマンマークの金沢に対して、投入される場面は限られるだろうとも思った。

投入があるなら、どうしても点が欲しい場面。相手を押し込んでいてプレッシャーを受けずに背番号25がボールを持てる状況しかない。その選手人生で三ツ沢を最も愛した男は、三ツ沢にも愛されていたのか、まさにその通りの状況へと試合は進むことになる。

試合前の檄が効きすぎたのか、声出し応援の効果もあって、「逆に気持ちが入りすぎたぶん、前がかりになりすぎた」と指揮官は苦笑混じりに振り返った。勢い良く試合に入り、横浜FCが序盤から主導権を握る。「相手のハイプレスに対して、ビルドアップで右側から入っていくために、彼のCBというよりはサイドバックとしての攻撃参加、配球に期待して」(四方田監督)起用された拓海はもちろんその持ち味を発揮し、イサカ・ゼインとともに積極的に攻め込んだ。

しかし、それは「こちらが奪って速い攻撃ができれば、低い位置でも基本的にスペースがある」(柳下正明監督)と狙っていた金沢の思うツボだった。横浜FCは31分、ロングボールを拓海がクリアしきれず、こぼれ球から杉浦恭平にボレーシュートを決められる。その3分後、中盤でボールを奪われると、攻め上がっていた拓海の背後のスペースから絵に描いたようなカウンターを浴びて連続失点。ハーフタイムの修正とともに、山根永遠に代えて山下諒也を後半から送り出すが、その効果が発揮される前に、1分もたたずまたしてもロングボールから失点。ホームの声援を、お祭り騒ぎの金沢サポーターの興奮が圧倒した。

 

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