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攻撃偏重のチーム同士、最高の殴り合いを……J2第20節・東京V戦プレビュー

▼超人と猟犬におあつらえ向きのスペース

守備は相当な苦戦が予想される一方で、攻撃はまさに横浜FCのストロングポイントを出せる相手だ。ヴェルディは攻撃時、両サイドバックが高い位置を取り、アンカーの選手も攻撃に加わり、CBが二人だけで相手のカウンターを受けて失点する場面が少なくない。攻守が切り替わった瞬間だけでなく、前節のように守備で全員が前からプレスに行った結果、一発で裏を取られてやられたりもしている。攻撃時も守備時も最終ラインを上げてくるので、超人サウロの1トップが火を吹きそうだ。

山口戦では「取った瞬間の相手の背後、両サイドのスペース」(四方田監督)がチームの最大の狙いだったが、それはこのヴェルディ戦でも同じだ。山口戦では前半はなかなかそこをうまく突けず、後半から入った“猟犬”山下諒也がスピード前回に走り回ってチャンスを量産し、決勝ゴールにもつなげた。ヴェルディ戦は武田英二郎が累積警告で出場停止となることもあり、山下の先発が濃厚。彼のスピードがいかに脅威であるか、一番知っているのはヴェルディだろう。その古巣を相手に、「特別な思い、感謝の気持ちもいっぱいある。自分が成長した姿をプレーで見せられるように全力でぶつかりたい」と、ガブリと噛み付く気満々だ。

しかしいくら超人と猟犬が速くても、裏を狙ってばかりで二人の運動会になってしまっては上手くいかない。そこのコントロールはキャプテンの長谷川と、こちらも古巣戦となる和田拓也の役目になるだろうか。ヴェルディの下部組織で育ち、2012年までヴェルディでプレー。その後J1をわたり歩き、古巣戦は大宮時代の2017年にあったのみで、今回が7年ぶりになる。「楽しみは楽しみだけど、すごい気合が入るかといったらいつもと同じです」と、和田らしい自然体のコメント。それでも本人が「昔よりボールを持てるようになった」というその成長を、古巣相手に披露してくれるだろう。

 

▼『短い毛布』の解答

筆者個人的にも、ヴェルディは一昨季までエルゴラッソで担当したチームであり、この試合を非常に楽しみにしている。試合前日、四方田監督に「ヴェルディの33得点はリーグ3位だが、33失点もワースト2位タイ。これは仕方ないんですかね?」と聞いてみた。もちろん横浜FCの30得点が4位で、22失点は下から9位タイで少ないとは言えないことを念頭に置いた質問だ。「それはヴェルディに聞いてください(笑)」とはぐらかされたが、「いやいや、一般論でいいので」と押してみたところ、次のような答が得られた。

「攻撃力も高くて守備力も高いというのは、選手の能力がリーグの中で相当に秀でていないとそういう結果にはならないと思います。そういう意味では、攻撃的か守備的か、どっちかに振れるチームがあるのは自然かなと思います」

昔、ヴェルディでロティーナ監督に似たような質問をして、「サッカーは短い毛布だ」という問答になったことを思い出す。短い毛布で寝るとき、足先まで覆えば首元や肩が寒い。首元まで引っ張り上げれば足先が冷える。「サッカーも同じだよ」とミステルは言った。人数をかけて守備すれば失点はしないが、前の人数が少なくなってしまう。攻撃的に点を取りにいこうとすれば、守備に割く意識は低くなる。「だからチャンスを作れて、しっかりディフェンスもできる。そのバランスの取れたチームを作ることが重要になる」のだと。

四方田監督は「そこの議論は自分たちのチームにも当てはまるのでね」と笑いながら、「自分たちが隙を作らず同時に攻撃的にやっていくというのは、ここ数試合ずっと考えさせられた部分」だと明かした。その結果が、ここで説明してきたマイナーチェンジとなって表れている。ヴェルディはどうか? 現状で目標達成が難しいとするなら、何かを変えてくるかもしれない。いずれにせよ、同じ攻撃偏重のチームだ。互いに無失点では済むまい。最高の殴り合いを期待する。

(文/芥川和久)

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