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中村俊輔「クオーターバック。うん、悪くないじゃん」……プレーヤーズ・ファイル vol.1

 

2022シーズン開幕の大宮戦、背番号25は90分、手塚康平に代わってピッチに入った。手塚と同じボランチの位置に入り、安永玲央と組む形に。新旧10番によるボランチコンビだ。

新チームが始動し、準備期間を通じて中村俊輔の主戦場はボランチだった。外国籍選手の合流前はシャドーに入り、1/20の大阪経済大との2回目の練習試合でも、後半から右シャドーとしてプレーしている。この時点では、四方田修平監督もシャドーでの起用を構想していたのかもしれない。「やはりラストパスはすごいですよ。練習でやってても、面白いなというところに綺麗にスルーパスが通ってきます」と、より前のエリアでのアシストに期待している様子が感じられた。

しかしチーム編成上、“トップかシャドーでなければできない”タイプの主力クラスが多すぎるのだ。クレーべ、サウロ・ミネイロ、伊藤翔、小川航基、フェリペ・ヴィゼウ、渡邉千真……。またその得点力を考えれば、長谷川竜也も当然、シャドーで使いたい。ゆえに俊輔だけでなく、齋藤功佑や松浦拓弥ら、パサー寄りの2列目の選手は軒並み、外国籍選手合流以後はボランチで試されるようになっていく。

2/3、キャンプでの最後の試合となったリバック・プロジェクト戦。1本目は功佑と安永が、2本目は松浦と俊輔がボランチコンビを組んでプレー。このコメント取材は、その翌日に行われた。第一声は、「ボランチ? どうなんですかね。まあ何だっていいし、別に」だった。

 

▼「特徴を出すなら最終ラインからのサイドチェンジ」

 もちろん、本心から「別に何だっていい」とは思っていないだろう。2019年夏、横浜FCに加入依頼、下平隆宏元監督からは一貫してボランチで使われた。昨季、その下平監督が解任され、早川知伸前監督(現ヘッドコーチ)が就任すると、ポジションは一列上がった。シャドーもしくはトップ下でのプレーに「鳥かごから出してもらったような気持ち」とまで語った選手に、こだわりがないわけがない(余談ですが、こういう“スポーツ紙の見出しになるような言葉”がスッと出てくるところが、やはりこの人はスターなんだなと思う。カズさんもそうだった)。今、四方田監督から任されているボランチと、下平監督に任されていたボランチと、その違いから聞いてみた。

「アグレッシブに動くことだね。シモさんのときは真ん中でボール回しの中心みたいな感じだったけど、ヨモさんの場合はコンサドーレの駒井(善成)くんみたいに、いっぱい動いて、いろんなところに顔を出して、前からプレスに行って、行って、という。そういうアグレッシブさと機動力を求められている」

もともとトップ下やサイドハーフをやっていても、自由に広範囲に動いてゲームメイクしながら、相手の急所を突くパス一発でゲームを決めるのが俊輔の凄みだった。守備も含めた運動量の問題は置いても、そこは感覚的には悪くないのかもしれない。

「そこで自分の特徴を出すんだったら、最終ラインから福森(晃斗)くんみたいなサイドチェンジとかになるかな。どうしてもコンサドーレのイメージが一番参考になるからね。そういうのを見つつ、最後は自分の特徴を生かすために、今は戦術を理解して、という感じでやってる。昨日(2/3トレーニングマッチ、リバック・プロジェクト戦)みたいに急にサイドチェンジを出せば、相手のサイドバックは中に絞ってるし、そう見せかけて間が空いてたらスルーパスを出せばいいし」

筆者個人的には、かつて広島や浦和のサッカーを見ていて、攻撃時に[4-1-5]になるとき、その真ん中の[1]に俊輔のような長いレンジのパスも出せるファンタジスタが入ったらどうなるのか見てみたいと、常々思っていた。

「分かんないけど、あそこの[1]だとしたら、今のところは機動力のある選手で、戦術理解のある選手になるんじゃないかな。あそこでパッともらっていきなりサイドチェンジとか……(難しいよ)。両脇が速くて、ストッパーからも(長くて正確なパスを)蹴れる人がいないと……([1]がそんなに余裕を持てない)。蹴れる人が、このチームはそんなに多くないから、だから自分の特徴だと、そんなに機動力がないぶん、そっち(最終ラインに下りて配球役)の枠で勝負したほうがいいのかなと思ってる。『あそこにシュンさん入れたら、あそこに誰を入れたらガラッとチームが良くなるんだよな、だけど90分はキツいでしょ』って、それはもうしょうがない(笑)。でも昨日の試合とかも、後半のほうがロングボールで相手の嫌なところ、嫌なところを突いていって。奥まで行った回数は後半のほうが多かったと思う。そういう自分の色を出す。それと同時に、誰かとのパイプラインを作ることでアピールはいくらでもできる。それはここに限らず、今までずっとやってきたことだから」

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